運命だけを信じてる
事前に作成しておいたマニュアルを小牧さんに渡す。
「これ、前山さんが?」
「あ、はい。口頭で説明するよりも分かりやすいかなって」
大切なところにはマーカーを引いて、自分なりに見やすくまとめたつもりだ。
だって私がOJTを憂鬱に思っていることは、小牧さんにはなにひとつ関係ないことで。こっちの都合で彼の前途を閉ざしてはダメだ。
だから精一杯、私に出来る限りの事を小牧さんにはしてあげたいんだ。
「…字も上手くなくて、ごめんなんだけど」
「そんなことないですよ。早く一人前になって、前山さんの右腕になれるよう精進しますね」
小牧さんは優しく笑ってくれた。
その笑顔に肩の力が抜けた。
ああ、彼よりも私の方が緊張していたようだ。