運命だけを信じてる
「大学卒業と同時に、親の見繕った"婚約者"と結婚するように言われて。それに反抗して、髪を染めて、内定をもらっていた会社にも行かず、フリーターになりました。親にも、婚約者にも、呆れられたくて…」
私は婚約者の解釈を誤っていたらしい。
彼は望んで婚約したわけではないようだ。
そうだよね。普通は携帯のアドレス帳に婚約者ではなく、名前で登録するはずだ。
「前山さんに早々に結婚を迫ったことも、たぶん、その反抗心からだったのかな。すみません。順番を間違えました」
携帯の電源を落とし、小牧さんは言った。
「僕と付き合っていただけませんか」
彼がフリーターになった理由も、金髪の理由も分かってしまった。
それでも私の好きな人は星崎課長であることに変わりはなくて…
「前山さんの好きな人が、あなたに振り向くまでで良いです。それまでで良いから、僕と、付き合ってくれませんか?」
「そんな期間限定みたいなこと…」
「前山さんの恋路は絶対に、邪魔しないと誓います。付き合うと言っても周りに公言する必要はないですし、秘密にしても構いません。僕との約束より好きな人との予定を優先してもらっても構いません」
無茶苦茶だよ。
そんなんで付き合ってるって言えるの?