運命だけを信じてる
振り返った星崎課長は私の顔を見るなり、言ってくれた。
「なんだ?悩み相談か?今夜、飲み行くか」
思いがけない誘いだった。
落ち着いて話を聞いてくれるという何気ない誘いだとは分かっているけれど、心が躍る。
でも。
好きな人と2人きりの食事。
それは小牧さんを裏切る行為だ。
例え小牧さんが、私の星崎課長に対する思いを知らないとしても、2人きりはよくないよね。
「なぜ悩みだと思うんです?」
「違うのか?言いにくそうな顔をしているから」
「違いますよ!今日の会議資料についてです」
「なんだよ、そっか。後で俺の席にもってこい。始業前でも構わないから」
「はい」
本当はーー星崎課長を呼び止めて、私は何を言いたかったのだろう。
ううん。言いたいことなんてなかった。
ただ反射的に呼び止めて、もう少し話をしたかっただけだ。
好き、って凄いパワーだよね。