悪夢はカモミールティと一緒に
 リュウゴがお茶の用意をしている間、私はおばあちゃんに会いに行く。

 そっと襖を開けて中を覗けば、ベッドの上でおばあちゃんは眠っていた。

 おばあちゃんはここ最近寝たきりになってしまい、リュウゴの支えや車椅子がなければベッドから離れられないらしい。

 リュウゴは懇親的におばあちゃんの介護を文句も言わずにこなしているから、本当にすごいことだと思う。

 私はベッドの側に寄って、おばあちゃんの寝顔を見つめた。

 皺に刻まれた顔。

 縮んでしまった身体。

 自分で自由に動く事もできなくなった老い。

 全てが悲しくて私は思わず泣いてしまう。

「おばあちゃん。今までリュウゴを支えてきてくれたんだね。本当にありがとう。これからは私がリュウゴを支えるから、心配しないでね」

 寝ているおばあちゃんを覗き込もうとさらに近づけば、足元でこつんと何かが触れた。

 屈んでみれば、ベッドの下には箱がいくつか押し込められている。

 それを一つ取り出して蓋を開けた。

 中から、今よりも若いおばあちゃんとリュウゴが写る写真がたくさん入っていた。

 お互いを撮り合っている写真。

 誰かに撮って貰った写真。

 リュウゴも、おばあちゃんも表情豊かに写っていた。

 この時のおばあちゃんはリュウゴと釣り合わせようと若作りを必死にしている。

 化粧が濃くて、写真で見ると、無理をしているのが伝わってくる。

 それでもリュウゴはおばあちゃんをいたわって、二人で写っている写真はどれもリュウゴのおばあちゃんに対する優しさが見えてくる。

 いい写真だと私は暫くそれに魅入っていた。

「何を見てるんだい?」

 お茶を運んできたリュウゴ。

 いつやってきたのか気がつかなかった。
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