悪夢はカモミールティと一緒に
彼がそれを横目に見た後、話し出そうと息を整えてから声を出した。
「まだお互いの名前も知らないね。僕はリュウゴ。君の名は?」
リュウゴ。どんな字を書くのだろう。でも漢字を訊く余裕はなかった。
「麻弥」
小さく自分の名前を呟けば、確かめるようにリュウゴが繰り返した。
「マヤ?」
軽く首を振って頷くと、リュウゴは「マヤ文明を思い出すね」とまるでよく知っているかのようにしみじみ呟いた。
「えっ? ち、違います。麻の『マ』に弥生の『ヤ』です。マヤ文明ではないです。高宮麻弥といいます。」
必死に私が漢字を説明し、きっちりと名乗るとリュウゴは「ごめん、ごめん」と笑っていた。
「からかうつもりはなかったんだけど、つい」
もしかしたら、言葉を引き出そうとしてわざとふざけたのだろうか。
そうだとしたら、策略に嵌ってしまった私は彼の思うつぼだ。
思わずムキになっていたことに気づいたあとは、自分がこっけいに思えた。固くなっていた私の頬の筋肉がほぐれ、リュウゴの笑いにつられて微笑んだ。
「そっか、麻弥ちゃんか」
私の笑みを見て安心したのか、リュウゴの顔が一際和らいだ。
その表情が本当にかっこよくて、私は魅入ってしまう。
「それで、なんで自殺しようとしたの?」
単刀直入に訊かれ、私は思わず周りの様子を窺った。
私が気にするほど、周りはどうでもいいことのようにそれぞれの時間を過ごしていた。
それに安心すると私は口を開いていた。
「なんか嫌になったから……」
きっかけは些細なことだった。
高校に上がったばかりの新学期。
独りぼっちになりたくなくて友達作りに慌てていたのが悪かった。
新しい顔ぶれが揃うクラスは未知の世界。
スタートで出遅れないように、自分でも積極的になろうと思っていた。
ただいい子ぶって、おどけて、好かれるように演じたのだ。
本当の自分を隠してでも。
それほど高校一年の始まりは私には高校生活を左右するほどの一大事だった。
でも、私はあっさりと失敗した。
本性を隠していたのは私だけではなかった。
みんな同じように様子を見ながら自分を演じていたのだ。
「まだお互いの名前も知らないね。僕はリュウゴ。君の名は?」
リュウゴ。どんな字を書くのだろう。でも漢字を訊く余裕はなかった。
「麻弥」
小さく自分の名前を呟けば、確かめるようにリュウゴが繰り返した。
「マヤ?」
軽く首を振って頷くと、リュウゴは「マヤ文明を思い出すね」とまるでよく知っているかのようにしみじみ呟いた。
「えっ? ち、違います。麻の『マ』に弥生の『ヤ』です。マヤ文明ではないです。高宮麻弥といいます。」
必死に私が漢字を説明し、きっちりと名乗るとリュウゴは「ごめん、ごめん」と笑っていた。
「からかうつもりはなかったんだけど、つい」
もしかしたら、言葉を引き出そうとしてわざとふざけたのだろうか。
そうだとしたら、策略に嵌ってしまった私は彼の思うつぼだ。
思わずムキになっていたことに気づいたあとは、自分がこっけいに思えた。固くなっていた私の頬の筋肉がほぐれ、リュウゴの笑いにつられて微笑んだ。
「そっか、麻弥ちゃんか」
私の笑みを見て安心したのか、リュウゴの顔が一際和らいだ。
その表情が本当にかっこよくて、私は魅入ってしまう。
「それで、なんで自殺しようとしたの?」
単刀直入に訊かれ、私は思わず周りの様子を窺った。
私が気にするほど、周りはどうでもいいことのようにそれぞれの時間を過ごしていた。
それに安心すると私は口を開いていた。
「なんか嫌になったから……」
きっかけは些細なことだった。
高校に上がったばかりの新学期。
独りぼっちになりたくなくて友達作りに慌てていたのが悪かった。
新しい顔ぶれが揃うクラスは未知の世界。
スタートで出遅れないように、自分でも積極的になろうと思っていた。
ただいい子ぶって、おどけて、好かれるように演じたのだ。
本当の自分を隠してでも。
それほど高校一年の始まりは私には高校生活を左右するほどの一大事だった。
でも、私はあっさりと失敗した。
本性を隠していたのは私だけではなかった。
みんな同じように様子を見ながら自分を演じていたのだ。