悪夢はカモミールティと一緒に
「お礼? 無理しなくていいよ」

「でも、それじゃ私の気が治まらないです」

「だったら、もう馬鹿なことはしないって約束してくれたらそれでいい……」

 リュウゴはこれ以上、お礼のことは話したくなさそうに私から視線を外した。

 私はこのままで済ませたくなかった。

「それじゃ、この先私が馬鹿なことしないように見守ってくれませんか?」

 言い切ったあと私は顔を赤くしていたと思う。

 厚かましいお願いをするような恥ずかしさがあった。

 自分らしからぬ積極的なアプローチは身体に力が入り、心臓が早鐘を打っていた。

「見守る?」

 リュウゴは少し驚き、私をじっと見つめる。

「時々私と会って欲しいんです」

 またリュウゴに会いたい。

 会えるならなんだってする。

 自殺行為を逆手にとって私はリュウゴに責任を押し付けているようだ。

「なるほど、不安定とみせかけて僕の気を引く。発想の転換だね。でも僕には分かるよ。君はもう自殺なんて考えないはずだ」

「でも会えなかったらわかりませんよ」

「僕を脅す気かい。もしかして、僕のこと本当で気に入ってくれた?」

 私は正直に大きくかぶりを振る。

「でも、君はまだ高校生だ。もう少し君が大人になったとき、もう一度考えてみるってどうだい? その時僕のことが好きなら、僕は真剣に君との付き合いを考える。僕は惚れてくれた人に一生を添い遂げたいと思ってほしいんだ。今の君ではそれはまだ考えられないだろ」

 これって、遠まわしに私と距離を置こうとしているんだろうか。

 とりあえず今は保留みたいな感じに曖昧に濁す。

 自分から差し出しながら、近寄れば遠ざかる。

 からかいなのか、本気にしてしまった私が悪いのか。

 まるで何かのゲームでもしているようだ。

 それとも幻? 私はリュウゴをじっと見つめた。

 リュウゴはどこまでも優しい笑みを浮かべている。

 それは心を奪う魔法をかけられたように魅了され、私はリュウゴに全てを捧げたくなってしまう。

 やっぱり運命かもしれない。

「私が大人になるまで待てばいいんですか」

「いや、ただ待つだけじゃない。高校生活を楽しんで勉強もしっかりすること。その先大学に入るか、就職するかは自由だけど、自分を磨いてしっかりとした大人になることが条件だ。できるかい?」

リュウゴの問いかけに、私は力強く頷いていた。
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