神志名社長と同居生活はじめました
そうなのだ。
会社から一緒に帰宅して、お茶をご馳走する為に家に寄っていただいたあの日以降、社長が引越しをしてくる気配がないのはおろか、連絡すらない。


「連絡なんてそのうち来るでしょ。でも、本当にいいなあ、超シンデレラストーリーじゃん」

「シンデレラって……。住むのは私のアパートですよ。六畳の一部屋しかない、狭いアパート」

「でも、いずれ社長と結婚したら、誰もが羨む玉の輿でしょ」

「だ、だから結婚だなんて考えてないですっ」

「一ミリも? これっぽっちも?」

「え……」


一ミリも、とか、これっぽっちも、とか、そういう言い方をされると言葉に詰まってしまう自分がいることに、今気付く。


玉の輿だとか社長の妻とかいう肩書きだとかには確かに一切興味はない。
だけど、社長は実は凄く優しい人だし、それに一緒にいると胸がドキドキすることもあってーー。



……でも、その社長はどうなんのだろう。
私のこと気に入ったとか言っていたけれど、どこまで本気?
まあ、悪意を持ってからかってくるような人ではないはずだけれど、いまいち本音も分からない。


誕生日に言われた、結婚しようという言葉も、あの時点では私が相手でなくても良かったみたいだし。



……社長のことは、多分気になっている。
だけど本当に結婚するなら、お付き合いをするなら、私のことを本当に好きだと思ってくれる人と、したい。
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