神志名社長と同居生活はじめました
「いいね」

「え?」

「名前呼び、想像以上にいいね。これからはずっと、俺のこと名前で呼んでよ」


はい⁉︎
予想外の返答をされ、目を思い切り丸くさせてしまう。


「何言ってるんですか! いくら二人きりの時だって、そんなの駄目ですよ!」

「え? これからずっとっていうのは、会社でも、っていう意味なんだけど」

「余計駄目ですよ! もう!」

「ほら、もう一回読んで? 雪人って」

社長が、その綺麗なお顔をズイッと私に近付けてくる。

こんなに間近で見るには心臓の動きが危うくなるくらい、やっぱり美形だ。

でもそれ以上に、名前をもう一度呼ぶだなんて、こんなにドキドキすること、もう無理!


恐らく顔を真っ赤にしてあわあわしていると、社長はそんな私を見て、クスッと口角を上げた。


「な、何で笑うんですか!」

「見てて面白かったから」

「しゃ、社長はほんとにズルいです!」

「ズルい? どこが?」

「だって私ばっかりドキド……」


……って。



待て待て待て。私、今何言おうとして……!



「……自分ばっかりドキドキしてる、って言おうとした?」

途中で途切れた言葉を正確に言い当てられ、ギクッと肩が跳ねる。
普段は常に無表情の社長の顔が、今は不敵に笑っているから、余計に悔しい。


「……やっぱり、ズルいです」
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