神志名社長と同居生活はじめました
「そんなことないよ」

「何でですか」

「だって俺も、ドキドキしてる」


え……と私が声を発するより早く、私の右手は社長に掴まれ、そのまま社長の胸元へと充てがわれる。


「ほら。分かる?」

「えと……」

確かに、社長の心臓の動きは、何だか早いような気がした。

社長も……私にドキドキしているの?


「雅」

頭上から、社長の優しい声色が降ってくる。
それだけで、私の胸はまたドキンと跳ね上がる。

そっと顔を上げると、社長が真剣な顔をして私を見つめていた。


いつもの無表情ではない。からかっている時の笑みを浮かべている訳でもない。


ただただ真剣な眼差しで、私をその瞳に映している。


社長の考えていることは、よく分からない。
私のこと、好きだとも一言も聞いてない。

だけど。

嘘を吐く人じゃないって、それだけは分かる。
優しい人だって、知っているから。
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