神志名社長と同居生活はじめました
「あー、楽しかったです!」
人気アトラクションのジェットコースターを三つ制覇した!
スリルも上々で、大満足!
「そう……それは良かった」
けれど、私とは対照的に、ベンチに座って疲れたような顔をしている社長。
しまった、私の趣味に付き合わせて疲れてしまったかな?
私は慌てて社長の隣に腰掛ける。
「ジェットコースター、つまらなかったですか? 私はなかなか楽しめたんですが、社長からしたら全然物足りなかったとか?」
私がそう尋ねると、社長は。
「……逆」
「え?」
「……スリルありすぎて酔った」
「えっ!」
私は慌ててショルダーバッグの中から園内で買ったペットボトル飲料を取り出し、社長に手渡した。
「大丈夫ですか!? お水飲んでください!」
「ありがと……」
弱々しくペットボトルを受け取った社長は、やはり弱々しくそれに口づける。
あ、間接キス……とか今はどうでもよくて、自分の好きなものに付き合わせてしまった挙げ句、社長の体調に全然気が付かなかった自分が情けない……。
「あの、本当にすみませんでした。途中で具合悪くなったのに、最後まで私に付き合ってくださったんですよね」
深々と頭を下げると、社長も少々慌てたような様子で「そういう訳じゃないよ」と答える。
ゆっくりと顔を上げると、少し困ったような、でも微笑んでくれている社長と目が合う。
「別に無理して付き合ったとかじゃないよ。まあ、最近のジェットコースターがこんなに猛スピードの急転直下とは思わなかったけど。あ、このデータはそのうち仕事にも活かせそうだ」
「仕事の話は今はいいですから。あの、次からは、具合が悪くなったらちゃんと言ってください。黙っていられたら、その方が心配しますから」
「心配掛けたくないから黙っていた訳じゃない」
「じゃあどうして言わなかったんですか?」
「……俺だけジェットコースターで酔った、なんて言うの恥ずかしいだろ」
……思いがけない、社長らしくない、でもどこか可愛いその発言に、私はついーー笑ってしまった。
「こら、笑うな」