愛は貫くためにある
「僕は幸せものです」
勉がそう言うので、麗奈は心配になった。
「どうなさったんですか?急に」
「お嬢様が、僕のために毛布を持ってきてくださった。そして、僕にかけてくださった。僕は今、とても幸せです」
「気づいていらっしゃったなら、声をかけてくださればよかったのに」
麗奈が毛布を勉に掛けていた時、勉は目を閉じていたのだ。寝ているものだと思っていた麗奈は、恥ずかしくなった。
「いえ、このままお嬢様にもっと触れて欲しいと思いました。僕の愚かな欲望です。お嬢様は、なかなか僕に甘えて下さらない。だから、お嬢様の気もちを知りたいがために寝たフリをしました」
「もう…勉さんずるい」
「申し訳ございません。ですが、嬉しかったです。体を大切にしてくださいと、貴女がそう僕の耳に囁いたのは」
「や、やだ。わ、私は囁いたわけではありません!」
麗奈はきっぱりと否定したが、勉の微笑みは止まらない。
「照れているところも可愛らしい。…おかしくなってしまいそうだ」
「そんな…困ります」
麗奈は、勉から目を逸らした。
「お嬢様」
勉の声に顔を上げると、勉は麗奈を優しく押し倒し、床に組み敷いた。
「ま、待ってください…勉さん…」
「おかしいな…理性が効かない」
「勉さん…」
「お嬢様…今宵は…理性が飛ぶかもしれません」
「そんな…」
動揺する、床に横になった麗奈の両手首をがっしりと掴み床に優しく押し付けた勉は、麗奈に顔を近づけた。
「だめです、勉さん…こんなところで…」
「ベッドならいいと?」
「そういう問題じゃ…」
「二人きりなら、どこでもいいのでは?」
「まだ早いです、私達…」
「愛に正解もない。かといって、不正解もない。そして…愛に、躊躇いはいらない。愛は、ただ真っ直ぐに…貫き通すだけ。わかりますね?お嬢様」
「ま、待ってください…わかりません…私、勉さんが初めてだから…わからない…」
「教えて差し上げます。愛とはどういうものなのか、この僕がたっぷりと貴女の心にも体にも、教えこんで差し上げます」
「待って、勉さん」
勉は麗奈を見つめたまま、麗奈の言葉を待っている。
「そんな…だめです、今は」
「いつならよろしいでしょうか」
「もう少し待って…」
「もう少しとは」
「そんなに急がないでください…!そんなに急かす人は嫌です!」
麗奈は半泣きになって、勉に訴えた。
「お嬢様…」
「いやっ、そんなに強引に迫る勉さんは嫌です。勉さんの優しいところが好きなのに…強引なところも好きです。でも、私は…優しい勉さんが好き。いやです、こんなに……」
「お嬢様……」
勉は麗奈の両手首を解放し、麗奈の頬に両手を添えた。
「申し訳ございません。僕は…急いでしまいました。あれだけ待つと、そう申しあげたのに…矛盾していますね」
「そうです、矛盾しています」
「お詫びに……」
勉は麗奈の唇に自分の唇を重ねた。
触れるだけの、優しいものだった。
「勉、さん…」
「お許し、いただけますか?お嬢様」
「……はい、勉さん」
勉は麗奈をゆっくりと起こした。
「勉さん」
「お嬢様、どうなさいましたか?」
「勉さんと、ここで寝ます。その方が、寝られる気がするんです」
「でも、こんなところで…」
勉の言葉を遮るように、麗奈は勉の右肩にもたれてぴたりと寄り添うように目を閉じた。
「お嬢様……」
勉は、麗奈に掛けてもらった毛布の中に麗奈と自分をすっぽり収めて、麗奈の手を握った。すぐに寝息を立てて寝たはずの麗奈の手が、僅かに勉の手を握ったのが、勉にはしっかりと伝わっていた。
「おやすみなさいませ。良い夢を」
麗奈の寝顔を見ながら、いつの間にか勉も目を閉じていた。
勉がそう言うので、麗奈は心配になった。
「どうなさったんですか?急に」
「お嬢様が、僕のために毛布を持ってきてくださった。そして、僕にかけてくださった。僕は今、とても幸せです」
「気づいていらっしゃったなら、声をかけてくださればよかったのに」
麗奈が毛布を勉に掛けていた時、勉は目を閉じていたのだ。寝ているものだと思っていた麗奈は、恥ずかしくなった。
「いえ、このままお嬢様にもっと触れて欲しいと思いました。僕の愚かな欲望です。お嬢様は、なかなか僕に甘えて下さらない。だから、お嬢様の気もちを知りたいがために寝たフリをしました」
「もう…勉さんずるい」
「申し訳ございません。ですが、嬉しかったです。体を大切にしてくださいと、貴女がそう僕の耳に囁いたのは」
「や、やだ。わ、私は囁いたわけではありません!」
麗奈はきっぱりと否定したが、勉の微笑みは止まらない。
「照れているところも可愛らしい。…おかしくなってしまいそうだ」
「そんな…困ります」
麗奈は、勉から目を逸らした。
「お嬢様」
勉の声に顔を上げると、勉は麗奈を優しく押し倒し、床に組み敷いた。
「ま、待ってください…勉さん…」
「おかしいな…理性が効かない」
「勉さん…」
「お嬢様…今宵は…理性が飛ぶかもしれません」
「そんな…」
動揺する、床に横になった麗奈の両手首をがっしりと掴み床に優しく押し付けた勉は、麗奈に顔を近づけた。
「だめです、勉さん…こんなところで…」
「ベッドならいいと?」
「そういう問題じゃ…」
「二人きりなら、どこでもいいのでは?」
「まだ早いです、私達…」
「愛に正解もない。かといって、不正解もない。そして…愛に、躊躇いはいらない。愛は、ただ真っ直ぐに…貫き通すだけ。わかりますね?お嬢様」
「ま、待ってください…わかりません…私、勉さんが初めてだから…わからない…」
「教えて差し上げます。愛とはどういうものなのか、この僕がたっぷりと貴女の心にも体にも、教えこんで差し上げます」
「待って、勉さん」
勉は麗奈を見つめたまま、麗奈の言葉を待っている。
「そんな…だめです、今は」
「いつならよろしいでしょうか」
「もう少し待って…」
「もう少しとは」
「そんなに急がないでください…!そんなに急かす人は嫌です!」
麗奈は半泣きになって、勉に訴えた。
「お嬢様…」
「いやっ、そんなに強引に迫る勉さんは嫌です。勉さんの優しいところが好きなのに…強引なところも好きです。でも、私は…優しい勉さんが好き。いやです、こんなに……」
「お嬢様……」
勉は麗奈の両手首を解放し、麗奈の頬に両手を添えた。
「申し訳ございません。僕は…急いでしまいました。あれだけ待つと、そう申しあげたのに…矛盾していますね」
「そうです、矛盾しています」
「お詫びに……」
勉は麗奈の唇に自分の唇を重ねた。
触れるだけの、優しいものだった。
「勉、さん…」
「お許し、いただけますか?お嬢様」
「……はい、勉さん」
勉は麗奈をゆっくりと起こした。
「勉さん」
「お嬢様、どうなさいましたか?」
「勉さんと、ここで寝ます。その方が、寝られる気がするんです」
「でも、こんなところで…」
勉の言葉を遮るように、麗奈は勉の右肩にもたれてぴたりと寄り添うように目を閉じた。
「お嬢様……」
勉は、麗奈に掛けてもらった毛布の中に麗奈と自分をすっぽり収めて、麗奈の手を握った。すぐに寝息を立てて寝たはずの麗奈の手が、僅かに勉の手を握ったのが、勉にはしっかりと伝わっていた。
「おやすみなさいませ。良い夢を」
麗奈の寝顔を見ながら、いつの間にか勉も目を閉じていた。