愛は貫くためにある
勉が夜分遅くに訪ねてきて、自分の部屋で二人きりになるなど、とんでもない。そんなことが姉に知られでもしたら、どんな酷い目に遭うか。麗奈はぶるぶる、と身震いをしながら右手に巻かれた包帯を見た。きっとこの程度で済まないだろう、と思った。それに、体調が悪いと言ったものの、悪いのは右手の調子だけでそれ以外は何の不調もない。勉に嘘をついたことが明るみに出れば、勉に責められることは避けられない。麗奈は、それが怖かった。ましてや、右手を怪我しているということがわかれば、なぜ黙っていたのかと言われるに違いない。麗奈は困り果てていた。
「お嬢様、それではまた後で」
「はい…お気をつけて」
麗奈は電話を切った後、すぐに亜里紗の部屋をノックした。
「お姉様、お姉様っ!」
「もう、なんなのよ!うるさいわねえ!」
亜里紗が勢いよくドアを開けたので、麗奈は驚いて尻餅をついた。
「こんな遅くになんの用?」
麗奈はすっくと立ち上がり、亜里紗を見た。
「勉さんがこっちに…!こっちに向かってるんです!」
「はあ?何寝ぼけたこと言ってんの?」
「本当なんです!体調が悪いからしばらく会わないって言ったら、見舞いに行くって…5分くらいで着くって」
「はあ…あんたの茶番には付き合ってられないわ。もう寝るから邪魔しないで」
「お姉様、待ってください…!」
亜里紗がドアを閉めようとした時、麗奈の携帯がポケットで震えた。
急いで携帯を手に取ると、川橋勉と画面に表示されていた。勉からの着信だった。
「スピーカー」
亜里紗の冷たい声にはっとした麗奈は、慌ててスピーカーに切り替えて電話に出た。
「勉さん」
「お嬢様…お見舞いに参りました。今、お嬢様のお宅の玄関にいます。ベル、鳴らしますね」
携帯から、家のベルが鳴る音がしっかりと聞こえた。と同時に、一階に響くベルの音は、麗奈にも亜里紗にも聞こえた。
「わ、わかりました。今開けます」
「はい、お待ちしております」
麗奈は、通話終了のボタンを押した。
「早く開けて、勉さまの相手」
「で、でも…私の右手…」
麗奈は、右手を見た。怪我が治るまで会うな、と亜里紗に言われた手前、のこのこと勉のところへ行くわけにはいかない。
「早くしなさい。もし怪我のことがバレたらバレたで仕方ないから、適当に上手く言い訳しなさい」
「えっ、で、でも…」
「適当に言えばなんとかなるから!あんたが呑気に普段通り言えば、嘘も真に聞こえるもんよ。早く行きなさい!」
「そんなこと言われても…なんて言えば…」
麗奈は嘘をつくのが苦手で、嘘というものが何より大嫌いなのだ。適当に誤魔化せと言われても困る。怪我が治るまで会うなと言ったのはそっちじゃないか、と麗奈は思った。
「あとのことはしっかり、ね」
亜里紗は麗奈を突き放してドアを閉めた。
「お姉様…!」
ドアを何度ノックしても反応はなく、麗奈はしょんぼりとした。
「お嬢様、それではまた後で」
「はい…お気をつけて」
麗奈は電話を切った後、すぐに亜里紗の部屋をノックした。
「お姉様、お姉様っ!」
「もう、なんなのよ!うるさいわねえ!」
亜里紗が勢いよくドアを開けたので、麗奈は驚いて尻餅をついた。
「こんな遅くになんの用?」
麗奈はすっくと立ち上がり、亜里紗を見た。
「勉さんがこっちに…!こっちに向かってるんです!」
「はあ?何寝ぼけたこと言ってんの?」
「本当なんです!体調が悪いからしばらく会わないって言ったら、見舞いに行くって…5分くらいで着くって」
「はあ…あんたの茶番には付き合ってられないわ。もう寝るから邪魔しないで」
「お姉様、待ってください…!」
亜里紗がドアを閉めようとした時、麗奈の携帯がポケットで震えた。
急いで携帯を手に取ると、川橋勉と画面に表示されていた。勉からの着信だった。
「スピーカー」
亜里紗の冷たい声にはっとした麗奈は、慌ててスピーカーに切り替えて電話に出た。
「勉さん」
「お嬢様…お見舞いに参りました。今、お嬢様のお宅の玄関にいます。ベル、鳴らしますね」
携帯から、家のベルが鳴る音がしっかりと聞こえた。と同時に、一階に響くベルの音は、麗奈にも亜里紗にも聞こえた。
「わ、わかりました。今開けます」
「はい、お待ちしております」
麗奈は、通話終了のボタンを押した。
「早く開けて、勉さまの相手」
「で、でも…私の右手…」
麗奈は、右手を見た。怪我が治るまで会うな、と亜里紗に言われた手前、のこのこと勉のところへ行くわけにはいかない。
「早くしなさい。もし怪我のことがバレたらバレたで仕方ないから、適当に上手く言い訳しなさい」
「えっ、で、でも…」
「適当に言えばなんとかなるから!あんたが呑気に普段通り言えば、嘘も真に聞こえるもんよ。早く行きなさい!」
「そんなこと言われても…なんて言えば…」
麗奈は嘘をつくのが苦手で、嘘というものが何より大嫌いなのだ。適当に誤魔化せと言われても困る。怪我が治るまで会うなと言ったのはそっちじゃないか、と麗奈は思った。
「あとのことはしっかり、ね」
亜里紗は麗奈を突き放してドアを閉めた。
「お姉様…!」
ドアを何度ノックしても反応はなく、麗奈はしょんぼりとした。