愛は貫くためにある
「いつの間にそんなに成長した?」
「さあ?」
とぼける大知に、拓真は一発みぞおちに拳を突きつけた。
「ぐっ…けほっ…」
大知ら涙目になりながら、微笑んだ。
「馬鹿野郎!何でもかんでも一人で抱え込んで決めやがって!少しは僕を頼れ!」
拓真は大知を抱きしめていた。
「若…」
大知の声は、弱々しかった。
「いいか、大知。ここまでして麗奈ちゃんを守れなかったら、ボコボコにするから覚えとけ。それと、何かあったら真っ先に僕に連絡しろ。いつでも相談に乗るからな」
「あざっす、若…」
大知は泣いていた。
「いつでも戻ってこい。待ってるからな、健と麗蘭で。抜けたいと思った時は、僕が全力を注ぐ。それと、命は大切にしろ」大知の耳元で呟かれたその言葉は、スーツの男には聞こえていなかった。
「あざっす、あざっす…若…」
拓真は大知からすっと身を離し、大知の胸めがけて拳を突きつけた。が、大知は拓真の拳を見事に片手の手のひらで受け止めた。
「これなら大丈夫だな。僕にも劣らない」
「若には勝てないっす」
泣きじゃくりながらそう言う大知に拓真は、「弱気なことを言うな」と背中を叩いた。
「麗奈ちゃんを守るんだろ?取り返すんだろ?」
「はい…若」
「麗奈ちゃんを奪って来い。自信持て」
「はいっ…」
「お前なら出来る、大丈夫だ。…頑張れ、大知」
「あざっす、若…。俺は、若に負けないくらいの良い男になって戻ってきます!」
拓真が頷くと、大知は深く頷いて黒塗りの車に乗った。黒塗りの車は、あっという間に小さくなっていった。
「大知、頑張れ」
拓真の後ろにいつの間にか立っていた健は、何度もその言葉を呟いていた。
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