愛は貫くためにある
麗蘭は首を横に振った。
そんなことはありません、と。
「わたし…その、男の人が怖くって…春彦さんはとても優しい方だってわかっているのに…」
麗蘭の手は少しだけ震えていた。
「いいんだよ、ゆっくりここの生活に慣れていけばいいんだから。ゆっくりしてていいんだよ」
「でも」
「だーいじょーぶ!まずは、しっかりご飯食べて栄養つける!」
はい、と麗蘭は頷いた。
麗蘭は、サンドイッチを間食し紅茶を飲んだ。
「あら、どうしたの?」
きょろきょろと喫茶店の店内を見渡す麗蘭を見て、桃が言った。
「素敵な…」
素敵な喫茶店だなあ、と麗蘭は思った。昔ながらの喫茶店というレトロ感もあるけれど、お洒落な置物や時計、壁紙の模様などが素敵だな、と麗蘭は思った。
「ありがとうな、麗蘭ちゃん」
春彦は照れていた。
「なんで照れんのよっ!」
桃が頬を膨らまして、向かいに座っていた春彦の頬を手で思い切りつねった。
「いてててて!いたいたい!」
春彦がそう叫ぶと、桃はすかさず
「大袈裟なのよ!まったくもー!」
とばっさり斬り捨てる。
そんな仲睦まじい戸田夫妻を見て、麗蘭は笑った。
「ふふふ」
麗蘭の笑った顔は、とても美しかった。桃と春彦は目を丸くして麗蘭を見ていたが、すぐに笑いだした。
そして今日も、カフェ・テリーヌは幸せな朝とともに開店する。
「いらっしゃいませ!何名様でしょうか?」
美優は朝の開店時間早々、モーニングセットを注文する客の対応に追われていた。モーニングセットは非常に人気が高く二種類ある。朝は軽食で済ませたいという人だけでなく、時間をかけて食べる時間は少ないが栄養のあるものをしっかり食べたいという人にも絶賛されているのだ。
麗蘭は朝食が終わり部屋に戻ったのだが、下の方から賑やかな声が聞こえてきて気になってしまい、部屋のドアを少し開けて下の様子を見ようと思った。しかし、対人恐怖症でもある麗蘭は怖くて見ることが出来なかった。
それに、賑やかな声が聞こえてくると麗蘭はその声が反響して、まるでその場にいるかのような錯覚に陥り恐怖を感じてしまうらしく、耳を塞がずにはいられなかった。
「うう、う…」
麗蘭は耳を両手で覆いながら、ベッドの上でうずくまった。
麗蘭が目を覚めると、既に窓の外は暗くなってきていた。
「あれ…?わたし、寝てた?」
麗蘭は起き上がって恐る恐る部屋のドアを少し開け、僅かな隙間から顔を覗かせた。客はいないらしく静まり返っていた。時折、食器のかちゃかちゃとした音がなったくらいで、客の気配は感じられなかった。
「桃さん?春彦さん…?」
麗蘭は、恐る恐る階段を降り桃と春彦を探した。
階段を降りている途中で、麗蘭は固まった。まだ、客がいたのだ。
しかも、一人だけ。
その客は赤い髪の若者で、前髪はセンターで分けていた。白いシャツに黒いジャケット、ジーンズを履いていた。
片耳にはピアスがきらりと光り、銀の煌びやかな十字架のネックレスを首から下げていた。
そんなことはありません、と。
「わたし…その、男の人が怖くって…春彦さんはとても優しい方だってわかっているのに…」
麗蘭の手は少しだけ震えていた。
「いいんだよ、ゆっくりここの生活に慣れていけばいいんだから。ゆっくりしてていいんだよ」
「でも」
「だーいじょーぶ!まずは、しっかりご飯食べて栄養つける!」
はい、と麗蘭は頷いた。
麗蘭は、サンドイッチを間食し紅茶を飲んだ。
「あら、どうしたの?」
きょろきょろと喫茶店の店内を見渡す麗蘭を見て、桃が言った。
「素敵な…」
素敵な喫茶店だなあ、と麗蘭は思った。昔ながらの喫茶店というレトロ感もあるけれど、お洒落な置物や時計、壁紙の模様などが素敵だな、と麗蘭は思った。
「ありがとうな、麗蘭ちゃん」
春彦は照れていた。
「なんで照れんのよっ!」
桃が頬を膨らまして、向かいに座っていた春彦の頬を手で思い切りつねった。
「いてててて!いたいたい!」
春彦がそう叫ぶと、桃はすかさず
「大袈裟なのよ!まったくもー!」
とばっさり斬り捨てる。
そんな仲睦まじい戸田夫妻を見て、麗蘭は笑った。
「ふふふ」
麗蘭の笑った顔は、とても美しかった。桃と春彦は目を丸くして麗蘭を見ていたが、すぐに笑いだした。
そして今日も、カフェ・テリーヌは幸せな朝とともに開店する。
「いらっしゃいませ!何名様でしょうか?」
美優は朝の開店時間早々、モーニングセットを注文する客の対応に追われていた。モーニングセットは非常に人気が高く二種類ある。朝は軽食で済ませたいという人だけでなく、時間をかけて食べる時間は少ないが栄養のあるものをしっかり食べたいという人にも絶賛されているのだ。
麗蘭は朝食が終わり部屋に戻ったのだが、下の方から賑やかな声が聞こえてきて気になってしまい、部屋のドアを少し開けて下の様子を見ようと思った。しかし、対人恐怖症でもある麗蘭は怖くて見ることが出来なかった。
それに、賑やかな声が聞こえてくると麗蘭はその声が反響して、まるでその場にいるかのような錯覚に陥り恐怖を感じてしまうらしく、耳を塞がずにはいられなかった。
「うう、う…」
麗蘭は耳を両手で覆いながら、ベッドの上でうずくまった。
麗蘭が目を覚めると、既に窓の外は暗くなってきていた。
「あれ…?わたし、寝てた?」
麗蘭は起き上がって恐る恐る部屋のドアを少し開け、僅かな隙間から顔を覗かせた。客はいないらしく静まり返っていた。時折、食器のかちゃかちゃとした音がなったくらいで、客の気配は感じられなかった。
「桃さん?春彦さん…?」
麗蘭は、恐る恐る階段を降り桃と春彦を探した。
階段を降りている途中で、麗蘭は固まった。まだ、客がいたのだ。
しかも、一人だけ。
その客は赤い髪の若者で、前髪はセンターで分けていた。白いシャツに黒いジャケット、ジーンズを履いていた。
片耳にはピアスがきらりと光り、銀の煌びやかな十字架のネックレスを首から下げていた。