愛は貫くためにある
和哉は、麗蘭を抱えて部屋へ入りベッドに静かに寝かせた。麗蘭はぐっすりと寝ていて、起きる気配がない。
(ごめんな、麗蘭…)
和哉は、麗蘭に酷いことを言ってしまったのを後悔した。仕事に集中していたとはいえ、感情的になってしまった。寝ている麗蘭の髪を優しく撫でるが、麗蘭は起きなかった。
和哉は、麗蘭が起きるまで絵を書いていた。絵を書いて欲しいと依頼を受けて絵を書いていたのだ。期日までには少しだけ余裕があった。
スケッチブックに、鉛筆を走らせる。
だんだんと濃くなっていく輪郭は、まるで自分を表現するかのように浮き上がっていた。
「ん、ん…」
麗蘭が、目を覚ました。
「あ、起きた?」
「かず、くん…」
「玄関で寝るなよ…」
「ごめんなさい」
「いや…いいけどさ」
和哉はスケッチブックの絵に視線を向けた。麗蘭はゆっくりと起き上がった。
「麗蘭?」
「なんですか?」
「さっきは、ごめんな」
和哉は、頭を下げて謝った。
「やめてください。かずくんは悪くありません」
「いいや、感情的になっちゃったし」
「いいえ、わたしが悪いんです。ごめんなさい」
「麗蘭」
和哉は麗蘭の手を握った。
「あのさ…麗蘭にこれ、あげる」
「?」
麗蘭は、首を傾げた。
和哉は、スケッチブックの中の一枚を破って麗蘭に渡した。
「これ、塗り絵に使って」
麗蘭は、和哉が手渡した絵を見た。
オランダを思わせる風車小屋とチューリップの花達。まるで本当の写真のように鮮明で、今にも動き出しそうな絵に、麗蘭は思わず息を呑んだ。
(やっぱり、かずくんは遠い存在なんだなあ…)
麗蘭は、そんなことを考えていた。
「どうした?」
「いいえ、なんでもありません」
「そう?ならいいけど」
そう言って、和哉はすぐにスケッチブックを手にして作業を始めた。
「麗蘭」
麗蘭は和哉を見た。
「一緒に、塗り絵、しようか」
いつもの麗蘭なら喜んで塗り絵をするのだろうが、麗蘭は首を縦に振らなかった。和哉は仕事が忙しいし、そんなことをしている暇などないということは、莉子から聞いた。莉子は麗蘭のことを妬んでいて、和哉の邪魔ばかりするなと麗蘭を責め立てていた。
それだけではない。我儘を言って困らせてしまえば、和哉にまた怒られて落ち込んでしまう。
「邪魔するなよ」
と、和哉が言ったことを思い出すと、
自分の存在自体が和哉の邪魔になっているんじゃないかと、後ろ向きに麗蘭は考えてしまう。
麗蘭が黙っていることを不審に思ったのか、和哉は麗蘭の手を引っ張った。
「どうした?」
「ううん、」
「塗り絵しよう。こっちおいで」
そう言って和哉は、麗蘭の手を引いて机の近くへやって来た。和哉は、麗蘭が持っていた自分の絵を取って机の上に置いた。
和哉は、机の引き出しから色鉛筆を取り出して麗蘭にオレンジの色鉛筆を差し出した。
「ほら」
麗蘭がなかなか動こうとしないからなのか、和哉は麗蘭の手に色鉛筆をしっかりと握らせた。
(ごめんな、麗蘭…)
和哉は、麗蘭に酷いことを言ってしまったのを後悔した。仕事に集中していたとはいえ、感情的になってしまった。寝ている麗蘭の髪を優しく撫でるが、麗蘭は起きなかった。
和哉は、麗蘭が起きるまで絵を書いていた。絵を書いて欲しいと依頼を受けて絵を書いていたのだ。期日までには少しだけ余裕があった。
スケッチブックに、鉛筆を走らせる。
だんだんと濃くなっていく輪郭は、まるで自分を表現するかのように浮き上がっていた。
「ん、ん…」
麗蘭が、目を覚ました。
「あ、起きた?」
「かず、くん…」
「玄関で寝るなよ…」
「ごめんなさい」
「いや…いいけどさ」
和哉はスケッチブックの絵に視線を向けた。麗蘭はゆっくりと起き上がった。
「麗蘭?」
「なんですか?」
「さっきは、ごめんな」
和哉は、頭を下げて謝った。
「やめてください。かずくんは悪くありません」
「いいや、感情的になっちゃったし」
「いいえ、わたしが悪いんです。ごめんなさい」
「麗蘭」
和哉は麗蘭の手を握った。
「あのさ…麗蘭にこれ、あげる」
「?」
麗蘭は、首を傾げた。
和哉は、スケッチブックの中の一枚を破って麗蘭に渡した。
「これ、塗り絵に使って」
麗蘭は、和哉が手渡した絵を見た。
オランダを思わせる風車小屋とチューリップの花達。まるで本当の写真のように鮮明で、今にも動き出しそうな絵に、麗蘭は思わず息を呑んだ。
(やっぱり、かずくんは遠い存在なんだなあ…)
麗蘭は、そんなことを考えていた。
「どうした?」
「いいえ、なんでもありません」
「そう?ならいいけど」
そう言って、和哉はすぐにスケッチブックを手にして作業を始めた。
「麗蘭」
麗蘭は和哉を見た。
「一緒に、塗り絵、しようか」
いつもの麗蘭なら喜んで塗り絵をするのだろうが、麗蘭は首を縦に振らなかった。和哉は仕事が忙しいし、そんなことをしている暇などないということは、莉子から聞いた。莉子は麗蘭のことを妬んでいて、和哉の邪魔ばかりするなと麗蘭を責め立てていた。
それだけではない。我儘を言って困らせてしまえば、和哉にまた怒られて落ち込んでしまう。
「邪魔するなよ」
と、和哉が言ったことを思い出すと、
自分の存在自体が和哉の邪魔になっているんじゃないかと、後ろ向きに麗蘭は考えてしまう。
麗蘭が黙っていることを不審に思ったのか、和哉は麗蘭の手を引っ張った。
「どうした?」
「ううん、」
「塗り絵しよう。こっちおいで」
そう言って和哉は、麗蘭の手を引いて机の近くへやって来た。和哉は、麗蘭が持っていた自分の絵を取って机の上に置いた。
和哉は、机の引き出しから色鉛筆を取り出して麗蘭にオレンジの色鉛筆を差し出した。
「ほら」
麗蘭がなかなか動こうとしないからなのか、和哉は麗蘭の手に色鉛筆をしっかりと握らせた。