愛は貫くためにある
「謎が謎を呼ぶってこのことね」
桃が口を尖らせた。
「どういうことなの?平田さんは一途な人だと思ってたのに、見損なったわ!」
ぷい、と桃が顔を背けた。
「まあまあ。怒るなよ、桃。男にはいろんな事情があるんだよ」
不貞腐れる桃を前に、守は話を続けた。
事の発端は、女の嫉妬だった。保田由美は、ずっと守に片想いをしていた。
由美と守は同級生で長い付き合いだった。周囲は由美と守の中を応援していたが、
守は由美をただの幼馴染としか見ていなかった。
由美は守にアタックするが、「好きな子がいるから」と断られた。
この時、守と由美は中学生。美優は小学生になったばかりだった。
「ねえ、本気で言ってるの?」
由美が守の腕を揺さぶる。
「ああ、本気だ」
「だってあの子、まだ小学生よ?」
「それが?」
守は由美の手を腕から引き離した。
「僕はみーちゃんを愛してるんだ」
「どうかしてるわよ!」
「もう誰にも止められないよ、この思いは。勿論、由美にもね」
由美は悔しさを顔に滲ませながら、守の部屋を出ていった。
それからほどなくして、事件が起こる。
由美が美優を追い出そうと画策していたことは、まだ誰も知らなかった。
泣きじゃくる、一人の女の子。美優は呆然とその子を見つめていた。
「謝るんだ、みーちゃん」
その声に振り向くと、守が立っていた。
「でも」
「でも、じゃないだろ」
「私、してない!何もしてないの…!」
美優は首をぶんぶんと横に振った。
しかし守は、美優の言い分を受け入れなかった。
「それならどうして、みーちゃんの鞄に優子の財布が入ってる?」
「わかんない…!でも、私じゃないの!」
「言い訳しないで、謝る」
守の冷たい目に、美優は涙を零した。
「本当なの!本当に私…!」
「守。優子の財布のお金、減ってる。みーちゃんが盗ったって」
由美が追い打ちをかけるように言った。
由美が美優の鞄を漁り、千円札二枚が由美の手にはあった。
「えっ…どうして…!」
「美優ちゃん、サイテー!」
「違う、私そんなことしてないよ!優子ちゃん、友達でしょ?」
美優の目が揺らぐ。
「美優ちゃんとは絶交!友達なんかじゃない!」
「そんな…」
「みーちゃん、言い訳はここまで。さ、謝って」
「してないのに…いたっ!」
してないと言い張る美優の頬を、守が叩いた。
ぱんっ、と乾いた音が辺りを包む。
「いい加減にしろ!」
「守兄さん…」
美優は、守に打たれた左頬を押さえている。
「謝れ」
美優はがっくりと膝をついた。
「現実からいつまで逃げてるつもりだ?
正直に盗ったら盗ったと、謝ればいいだろ?」
その言葉を聞いた途端、美優の心の何かが壊れた。一瞬の破壊力。
気が付けば、美優は自分が周囲から白い目で見られていることに気付いた。
「ごめんね…優子ちゃん…」
由美と優子は、美優を見下すように見ていた。
守はどうしてこんなことをした、と美優を責めた。
美優の心はずたずただった。美優はおぼつかない足取りで部屋に上がっていった。
これが美優を見る最後になるとは、誰も予想していなかった。
桃が口を尖らせた。
「どういうことなの?平田さんは一途な人だと思ってたのに、見損なったわ!」
ぷい、と桃が顔を背けた。
「まあまあ。怒るなよ、桃。男にはいろんな事情があるんだよ」
不貞腐れる桃を前に、守は話を続けた。
事の発端は、女の嫉妬だった。保田由美は、ずっと守に片想いをしていた。
由美と守は同級生で長い付き合いだった。周囲は由美と守の中を応援していたが、
守は由美をただの幼馴染としか見ていなかった。
由美は守にアタックするが、「好きな子がいるから」と断られた。
この時、守と由美は中学生。美優は小学生になったばかりだった。
「ねえ、本気で言ってるの?」
由美が守の腕を揺さぶる。
「ああ、本気だ」
「だってあの子、まだ小学生よ?」
「それが?」
守は由美の手を腕から引き離した。
「僕はみーちゃんを愛してるんだ」
「どうかしてるわよ!」
「もう誰にも止められないよ、この思いは。勿論、由美にもね」
由美は悔しさを顔に滲ませながら、守の部屋を出ていった。
それからほどなくして、事件が起こる。
由美が美優を追い出そうと画策していたことは、まだ誰も知らなかった。
泣きじゃくる、一人の女の子。美優は呆然とその子を見つめていた。
「謝るんだ、みーちゃん」
その声に振り向くと、守が立っていた。
「でも」
「でも、じゃないだろ」
「私、してない!何もしてないの…!」
美優は首をぶんぶんと横に振った。
しかし守は、美優の言い分を受け入れなかった。
「それならどうして、みーちゃんの鞄に優子の財布が入ってる?」
「わかんない…!でも、私じゃないの!」
「言い訳しないで、謝る」
守の冷たい目に、美優は涙を零した。
「本当なの!本当に私…!」
「守。優子の財布のお金、減ってる。みーちゃんが盗ったって」
由美が追い打ちをかけるように言った。
由美が美優の鞄を漁り、千円札二枚が由美の手にはあった。
「えっ…どうして…!」
「美優ちゃん、サイテー!」
「違う、私そんなことしてないよ!優子ちゃん、友達でしょ?」
美優の目が揺らぐ。
「美優ちゃんとは絶交!友達なんかじゃない!」
「そんな…」
「みーちゃん、言い訳はここまで。さ、謝って」
「してないのに…いたっ!」
してないと言い張る美優の頬を、守が叩いた。
ぱんっ、と乾いた音が辺りを包む。
「いい加減にしろ!」
「守兄さん…」
美優は、守に打たれた左頬を押さえている。
「謝れ」
美優はがっくりと膝をついた。
「現実からいつまで逃げてるつもりだ?
正直に盗ったら盗ったと、謝ればいいだろ?」
その言葉を聞いた途端、美優の心の何かが壊れた。一瞬の破壊力。
気が付けば、美優は自分が周囲から白い目で見られていることに気付いた。
「ごめんね…優子ちゃん…」
由美と優子は、美優を見下すように見ていた。
守はどうしてこんなことをした、と美優を責めた。
美優の心はずたずただった。美優はおぼつかない足取りで部屋に上がっていった。
これが美優を見る最後になるとは、誰も予想していなかった。