愛は貫くためにある
「あら、もう帰っちゃうの?」
理沙子が、和哉の部屋を出た麗蘭を見て言った。
「はい。お邪魔しました」
「まだいてもいいのに」
「いいんです。よくわかったんです、わたし」
「わかったって、何が?」
理沙子は首を傾げて尋ねた。

「わたしは…かずくんとは、うまくやっていけると思っていました。でも、かずくんはとても遠い存在の人で、こんなわたしとは違いすぎると思ったんです。かずくんは、こんなわたしとなんかいない方が…」
「何を言ってるの。和哉は麗蘭ちゃんのことが大好きなのよ?気がついたら麗蘭ちゃんのことばっかり、楽しそうに話すんだから」
「そんなことありません」
麗蘭は首を横に振った。

「理沙子さん、かずくんに伝えてください。わたしは、かずくんに出会えてよかったって。かずくんに愛されて幸せだったって」

麗蘭は、寂しそうに笑って、和哉の家を出た。
これが、まさか麗蘭を見る最後の姿になるとは、誰も予想していなかった。
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