愛は貫くためにある
第3章 レストランから始まる恋
十年越しの愛
今日の天気は、とても風が唸り声を上げるほど強かった。嫌な予感がする、と麗蘭は思った。
「あら、誰かしら」
営業時間外に、ドアをどんどんどんと叩く音に驚き、桃がドアを開けると、そこには二人の男がいた。
「ちょっとお尋ねしますが」
そう言って、二人の男は半ば強引に中へ入り込んだ。
「ちょ、ちょっと困ります!」
もう営業時間は終了しました、と桃が叫んでも、二人の男はびくともしなかった。
麗蘭は、図々しくも入ってきた二人の男を見るなり立ち上がって、五歩ほど後ずさった。
「なんで……」
麗蘭は体の震えが止まらなかった。
「麗蘭……やっと見つけた」
一人の、がっしりとした体格のグレーの髪をした鋭い目の男が、麗蘭を見た途端柔らかく微笑んだ。
その男は、麗蘭のもとへ駆け寄った。
麗蘭は怖くて、動けなかった。
「麗蘭、探したんだぞ…よかった、無事で」
「や、やめてください…拓真さん」
麗蘭は震える体のまま、更に拓真という男からの距離を遠ざけようと後ずさった。
「怖がらせて、悪かった。でも、僕は麗蘭のことが大切だから」
「やめてください、そんな嘘」
「嘘じゃない。すごく、探した」
拓真は、麗蘭を優しく抱きしめた。
「お願いだから、もう僕から離れないでくれ。麗蘭がいなくなったと思うと、僕は何も手につかない」
麗蘭の震える背を、優しく拓真は撫でた。
「麗蘭。もう逃げようと思わないことだな」
もう一人の男がそう言い放つと、麗蘭は更にがたがたと震えだした。
「麗蘭、大丈夫だからな。…お父さん、怖がらせちゃいけませんよ」
「お前は、俺の借金のかたなんだからな」
「ど、どういうことなんだ?」
春彦は顔を青ざめて言った。
「俺は麗蘭の実の父親だ。借金のかたにこいつを拓真さんに売った」
「な、なんて酷いことを…!」
桃が叫んだ。
「僕は…麗蘭を買うことには反対だった。でも…麗蘭を手に入れられるのなら、その話に乗ってもいいかなと思ったんです」
「それでもあんたたちは人間か?」
春彦はカウンターをどん、と叩いた。
「麗蘭に、僕は一目惚れしたんです」
えっ、と小さく麗蘭が声を上げた。
「麗蘭に振り向いてほしいがために、卑怯な手を使ってしまったことで…麗蘭は僕から逃げた」
拓真の、切ない声が麗蘭に響いた。
「卑怯な手というのは…嫌がる麗蘭を、無理やり抱きしめたり手を握ったり…それも強く握ってしまったから嫌われるのも無理はないんだけど」
「はは。それに、若は情熱的ですからね」
麗蘭の父親の播磨が言った。
「若?」
春彦が拓真を見た。
「…ええ、僕は、元ヤクザの若頭でした。だから今でも、若と呼ぶ部下はいます」
「なんだと!?ヤクザの若頭!?」
「申し訳ありません。ですが、ヤクザだったのは昔の話で…もう堅気になったんです。それで…レストランを経営しております」
「ふん、そんなの信じられんな」
「麗蘭に初めて会ったのは、僕が25歳でやんちゃだった時です」
そう言って、拓真は麗蘭の背中を撫でながら話し始めた。
「あら、誰かしら」
営業時間外に、ドアをどんどんどんと叩く音に驚き、桃がドアを開けると、そこには二人の男がいた。
「ちょっとお尋ねしますが」
そう言って、二人の男は半ば強引に中へ入り込んだ。
「ちょ、ちょっと困ります!」
もう営業時間は終了しました、と桃が叫んでも、二人の男はびくともしなかった。
麗蘭は、図々しくも入ってきた二人の男を見るなり立ち上がって、五歩ほど後ずさった。
「なんで……」
麗蘭は体の震えが止まらなかった。
「麗蘭……やっと見つけた」
一人の、がっしりとした体格のグレーの髪をした鋭い目の男が、麗蘭を見た途端柔らかく微笑んだ。
その男は、麗蘭のもとへ駆け寄った。
麗蘭は怖くて、動けなかった。
「麗蘭、探したんだぞ…よかった、無事で」
「や、やめてください…拓真さん」
麗蘭は震える体のまま、更に拓真という男からの距離を遠ざけようと後ずさった。
「怖がらせて、悪かった。でも、僕は麗蘭のことが大切だから」
「やめてください、そんな嘘」
「嘘じゃない。すごく、探した」
拓真は、麗蘭を優しく抱きしめた。
「お願いだから、もう僕から離れないでくれ。麗蘭がいなくなったと思うと、僕は何も手につかない」
麗蘭の震える背を、優しく拓真は撫でた。
「麗蘭。もう逃げようと思わないことだな」
もう一人の男がそう言い放つと、麗蘭は更にがたがたと震えだした。
「麗蘭、大丈夫だからな。…お父さん、怖がらせちゃいけませんよ」
「お前は、俺の借金のかたなんだからな」
「ど、どういうことなんだ?」
春彦は顔を青ざめて言った。
「俺は麗蘭の実の父親だ。借金のかたにこいつを拓真さんに売った」
「な、なんて酷いことを…!」
桃が叫んだ。
「僕は…麗蘭を買うことには反対だった。でも…麗蘭を手に入れられるのなら、その話に乗ってもいいかなと思ったんです」
「それでもあんたたちは人間か?」
春彦はカウンターをどん、と叩いた。
「麗蘭に、僕は一目惚れしたんです」
えっ、と小さく麗蘭が声を上げた。
「麗蘭に振り向いてほしいがために、卑怯な手を使ってしまったことで…麗蘭は僕から逃げた」
拓真の、切ない声が麗蘭に響いた。
「卑怯な手というのは…嫌がる麗蘭を、無理やり抱きしめたり手を握ったり…それも強く握ってしまったから嫌われるのも無理はないんだけど」
「はは。それに、若は情熱的ですからね」
麗蘭の父親の播磨が言った。
「若?」
春彦が拓真を見た。
「…ええ、僕は、元ヤクザの若頭でした。だから今でも、若と呼ぶ部下はいます」
「なんだと!?ヤクザの若頭!?」
「申し訳ありません。ですが、ヤクザだったのは昔の話で…もう堅気になったんです。それで…レストランを経営しております」
「ふん、そんなの信じられんな」
「麗蘭に初めて会ったのは、僕が25歳でやんちゃだった時です」
そう言って、拓真は麗蘭の背中を撫でながら話し始めた。