愛は貫くためにある
「僕は、荒れに荒れていました。親父はとても強い権力を持っていて、僕はその息子。誰も自分には逆らいもしないと、やりたい放題の有様でした」
麗蘭は、震える手で拓真の胸のワイシャツを掴んだ。
「そんな時、麗蘭に会ったんです。
麗蘭はその時…何歳だったかな」
「十四です」
「麗蘭…」
麗蘭が顔を上げ、拓真を見た。
「十歳差、だったな」
麗蘭は静かに頷いた。
「僕の言うことは誰でも聞くと思っていたから、調子に乗っていた僕はいつも可愛い女の子を見つけてはナンパして…」
「最低なやつだな、お前ってやつは!」
春彦が麗蘭を拓真から引き離し、拓真の胸ぐらを掴んだ。
「やめてよ、春彦!」
桃の叫びが悲しく響き渡る。
「麗蘭ちゃんを…麗蘭ちゃんを弄んだのか!?」
「お怒りはごもっともですが、離していただけませんか?」
拓真の眉間に皺がより、拓真は右手を振り上げた。
「やめてっ…」
麗蘭は拓真の右手首を掴んだ。
「お願い…やめてください、拓真さん」
「ふっ」
拓真が笑った。
春彦は目を見開いて固まった。
「麗蘭。僕が、春彦さんを殴ると思うか?」
「えっ?ち、違うんですか?」
「違うに決まってるだろ。春彦さんの肩をぽん、ってしようとしただけなんだけどな」
拓真は麗蘭に掴まれた右手首を見て、頬を緩ませた。
「そうだったんですか!?わたし、てっきり…」
「いいんだよ。…春彦さん、僕を、殴ってくださいませんか」
「は?」
「麗蘭ちゃんを、傷つけてしまった罰を。怖がらせてしまった罰を。…何度でも、殴ってください」
「…いいんだな?」
「ええ。報復など、僕が許しません。もし、部下にそのような兆候が見られるようであれば、対処は致しますので、ご安心を」
拓真は目を瞑った。覚悟はしていたのであろう。春彦は拳を振り上げ、拓真に襲いかかった。
「やめてください…!」
麗蘭の綺麗な声が、拓真を庇った。
何の衝撃もないことを不思議に思った拓真は、静かに目を開けた。すると、拓真の目の前には、麗蘭が春彦に懇願する姿があった。
「お願いします、春彦さん。拓真さんを、殴らないでください」
「どうしてだ?怖かったんだろ?麗蘭ちゃんを傷つけたことには変わりがない」
「でも…拓真さんは、こう見えてもとても優しいんです!」
(麗蘭…こう見えても、は余計だぞ)
拓真は、麗蘭に庇われたことに驚きを感じつつも、嬉しさで胸がいっぱいだった。
麗蘭は、震える手で拓真の胸のワイシャツを掴んだ。
「そんな時、麗蘭に会ったんです。
麗蘭はその時…何歳だったかな」
「十四です」
「麗蘭…」
麗蘭が顔を上げ、拓真を見た。
「十歳差、だったな」
麗蘭は静かに頷いた。
「僕の言うことは誰でも聞くと思っていたから、調子に乗っていた僕はいつも可愛い女の子を見つけてはナンパして…」
「最低なやつだな、お前ってやつは!」
春彦が麗蘭を拓真から引き離し、拓真の胸ぐらを掴んだ。
「やめてよ、春彦!」
桃の叫びが悲しく響き渡る。
「麗蘭ちゃんを…麗蘭ちゃんを弄んだのか!?」
「お怒りはごもっともですが、離していただけませんか?」
拓真の眉間に皺がより、拓真は右手を振り上げた。
「やめてっ…」
麗蘭は拓真の右手首を掴んだ。
「お願い…やめてください、拓真さん」
「ふっ」
拓真が笑った。
春彦は目を見開いて固まった。
「麗蘭。僕が、春彦さんを殴ると思うか?」
「えっ?ち、違うんですか?」
「違うに決まってるだろ。春彦さんの肩をぽん、ってしようとしただけなんだけどな」
拓真は麗蘭に掴まれた右手首を見て、頬を緩ませた。
「そうだったんですか!?わたし、てっきり…」
「いいんだよ。…春彦さん、僕を、殴ってくださいませんか」
「は?」
「麗蘭ちゃんを、傷つけてしまった罰を。怖がらせてしまった罰を。…何度でも、殴ってください」
「…いいんだな?」
「ええ。報復など、僕が許しません。もし、部下にそのような兆候が見られるようであれば、対処は致しますので、ご安心を」
拓真は目を瞑った。覚悟はしていたのであろう。春彦は拳を振り上げ、拓真に襲いかかった。
「やめてください…!」
麗蘭の綺麗な声が、拓真を庇った。
何の衝撃もないことを不思議に思った拓真は、静かに目を開けた。すると、拓真の目の前には、麗蘭が春彦に懇願する姿があった。
「お願いします、春彦さん。拓真さんを、殴らないでください」
「どうしてだ?怖かったんだろ?麗蘭ちゃんを傷つけたことには変わりがない」
「でも…拓真さんは、こう見えてもとても優しいんです!」
(麗蘭…こう見えても、は余計だぞ)
拓真は、麗蘭に庇われたことに驚きを感じつつも、嬉しさで胸がいっぱいだった。