愛は貫くためにある
拓真は、麗蘭と会っていた。
場所はレストランの2階の、拓真の部屋。

「麗蘭…会いたかった」

そう言って麗蘭を抱きしめるも、麗蘭は拓真の腕をするりとすり抜けた。

「拓真さんの嘘つき。…蘭子さんとお幸せに」

麗蘭は泣きながら走り去っていく。
拓真は麗蘭を追いかけるも、全く追いつけない。いつの間にか麗蘭の姿は、白く濃い霧に隠れて見えなくなってしまった。

「待って…麗蘭…」

いつの間に話せるようになったのかと、拓真は思った。


すると、体に衝撃が走った。

「いって…」

目を覚ますと、天井が目に入った。
拓真はベッドから転げ落ち、床に大の字になっていた。
「…夢だったのか」
拓真は起き上がり、頭をおさえた。

(夢だったから、麗蘭は話せていたんだな)

拓真は、窓の外を見た。
快晴で、太陽が眩しく笑っている。
今日は定休日だ。

「麗蘭に…花でも買っていこう」

拓真は着替えをして、花屋へ立ち寄った。

(うーん…どの花にしよう。迷うな…)

拓真は花をいろいろ見て回ったが、どれが良いか迷ってしまい決められずにいた。

(やっぱり仏花がいいのかな?いや、麗蘭は生きてる。だから仏花になんてしたくない。それに…麗蘭の好きな花を選びたい)

その時、拓真はふと疑問に思った。

(ん?待てよ。そういえば、麗蘭ってなんの花が好きなんだろう…?)

拓真は、麗蘭が花が好きだということは聞いていたが、なんの花が好きなのかは知らなかった。
こんなことになるなら聞ければよかった、と拓真は後悔した。

(もっと麗蘭の話を…聞いてあげればよかった)

そんなことを考えていると、店員が拓真に近づいてきた。

「お困りですか?」
「ああ…大切な人に、花を届けたいと思って」
目をきらきらと輝かせる若い女性店員に、拓真は尋ねた。
「女性って、どんな花が好きなんでしょうか?」
「そうですね…人それぞれですので…」
確かにそうだ。愚問だな、と拓真は思った。
「カーネーションは人気ですよ。ひまわりとか、どうでしょう?」
「カーネーション…ひまわり?」
見せてもらえますか、と言うと店員は目を更に輝かせてカーネーションとひまわりを持ってきた。
余程カーネーションとひまわりが好きらしい。
「綺麗な色だ…」
拓真はカーネーションを手に取った。
カーネーションはピンクだった。
麗蘭の好きな色だ、と拓真は目を細めた。
「珍しいですね。ピンクのカーネーションの縁(ふち)が白色だなんて」
「そうなんですよ。綺麗でしょう?」
「ええ」
拓真は、カーネーションを買うことにした。もちろん、ひまわりも。
ピンクのカーネーションと縁が白色のピンクのカーネーションの束とひまわりを抱えて、拓真は店をあとにした。


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