愛は貫くためにある
(喜んでくれるかな?麗蘭…)
麗蘭のところへ向かうと、そこには既に花が供えられており、和哉が立っていた。拓真を見るなり、和哉は拓真のもとへ駆け寄った。そして、拓真の腕を引っ張り地面へと叩きつけた。
「お前な…僕がどんな気持ちで麗蘭を譲ったと思ってる…!?」
和哉は麗蘭の墓の目の前で、拓真を殴った。
「…っ、僕が悪いんだ。麗蘭を傷つけた僕が」
「当然だ!ふざけんな!」
「…佐久間さん、少しだけ待ってくれ」
「は…?」
拓真はよろめきながら立ち上がって、地面に落ちたひまわりとカーネーションを拾った。
「麗蘭に…花を持ってきたんだ。その花を飾ってから…」
「ふうん…麗蘭のことは忘れて、元婚約者の女とデキてんのかと思ったけど…違うんだな」
佐久間が呟いた。
「麗蘭…カーネーションとひまわりだよ」
拓真は、花を供えて手を合わせた。
「なんの花が好きかわからなかったけど…喜んでくれると嬉しいな」
拓真は笑いかけた。
すると、ぴしゃっ、という音が聞こえた。
「よくも…よくも麗蘭の前で笑えるもんだな?麗蘭を追い詰めたのはお前なんだぞ!?」
「…佐久間さん、もしかして僕に水をかけました?」
拓真の髪と顔、胸のあたりまで水がかかって濡れていた。
和哉は柄杓を手に持っていた。
水はほとんど入っていなかった。
「もしかしなくてもかけたよ」
和哉は拓真を睨んだ。
「麗蘭は死んだんだ」
「麗蘭は生きている」
「何故そう言いきれる?」
「麗蘭が死んだなんて、信じられない」
「現実逃避かよ」
「生きてるんだ、麗蘭は」
和哉は、麗蘭を追い詰めた拓真を責めた。それほどまでに和哉は、麗蘭のことを好きなのだと、改めて拓真は唇を噛み締めた。
「麗蘭を殺したのは、お前だ」
和哉はそう言い放ち、拓真を一発殴って去っていった。
それからどれくらい座り込んでいただろう。辺りが暗くなってもなお、拓真は麗蘭から離れようとせず、溢れ出す涙を零していた。
「そうだよな…僕が悪いんだ。僕が…麗蘭を殺したのかもしれないな」
麗蘭を追い詰めたのは間違いなく自分だ、と拓真は項垂れた。
拓真は、目の前の墓前を見つめた。
座り込んでいた拓真は、麗蘭に話しかけるようにぽつりぽつりと話し始めた。
「麗蘭、帰ってきてくれよ。麗蘭がいないと、何も手につかないよ」
そう伝えても、麗蘭の声は聞こえない。麗蘭の姿さえも見つからない。
麗蘭は本当に死んでしまったのだろうかと思うと、拓真の涙は止まらなかった。
冷たい雨が、激しく打ちつける。
それなのに拓真は、立ち上がることもせず墓前に座り込んで泣いていた。
拓真の服はびしょ濡れで、拓真の髪から雫がぽとぽとと落ちた。
「こんなところで何をしているの。たっくん、お願いだから帰りましょ」
降ってきた声に顔を上げると、蘭子が傘を差しながら拓真の隣にしゃがんだ。自分がさしている傘に拓真を入れた蘭子は、行こうと拓真の腕を掴んだが、拓真は動こうとしなかった。
「たっくん、体壊しちゃうよ」
「いいんだ。僕なんて」
「何を言ってるの!だめよ。早く帰って…」
「麗蘭……寒く、ないか?」
拓真はおもむろに立ち上がり、蘭子が持っていたもうひとつの傘を麗蘭の墓の上に被せて濡れないようにした。
「たっくん…」
蘭子は視線を逸らした。
「こんなに、濡れて……寒いだろ?」
拓真は墓石に触れて、優しく撫でた。
「大丈夫。僕が…麗蘭の傘になるから」
拓真は、雨が止むまで麗蘭に傘を差し続けた。
麗蘭のところへ向かうと、そこには既に花が供えられており、和哉が立っていた。拓真を見るなり、和哉は拓真のもとへ駆け寄った。そして、拓真の腕を引っ張り地面へと叩きつけた。
「お前な…僕がどんな気持ちで麗蘭を譲ったと思ってる…!?」
和哉は麗蘭の墓の目の前で、拓真を殴った。
「…っ、僕が悪いんだ。麗蘭を傷つけた僕が」
「当然だ!ふざけんな!」
「…佐久間さん、少しだけ待ってくれ」
「は…?」
拓真はよろめきながら立ち上がって、地面に落ちたひまわりとカーネーションを拾った。
「麗蘭に…花を持ってきたんだ。その花を飾ってから…」
「ふうん…麗蘭のことは忘れて、元婚約者の女とデキてんのかと思ったけど…違うんだな」
佐久間が呟いた。
「麗蘭…カーネーションとひまわりだよ」
拓真は、花を供えて手を合わせた。
「なんの花が好きかわからなかったけど…喜んでくれると嬉しいな」
拓真は笑いかけた。
すると、ぴしゃっ、という音が聞こえた。
「よくも…よくも麗蘭の前で笑えるもんだな?麗蘭を追い詰めたのはお前なんだぞ!?」
「…佐久間さん、もしかして僕に水をかけました?」
拓真の髪と顔、胸のあたりまで水がかかって濡れていた。
和哉は柄杓を手に持っていた。
水はほとんど入っていなかった。
「もしかしなくてもかけたよ」
和哉は拓真を睨んだ。
「麗蘭は死んだんだ」
「麗蘭は生きている」
「何故そう言いきれる?」
「麗蘭が死んだなんて、信じられない」
「現実逃避かよ」
「生きてるんだ、麗蘭は」
和哉は、麗蘭を追い詰めた拓真を責めた。それほどまでに和哉は、麗蘭のことを好きなのだと、改めて拓真は唇を噛み締めた。
「麗蘭を殺したのは、お前だ」
和哉はそう言い放ち、拓真を一発殴って去っていった。
それからどれくらい座り込んでいただろう。辺りが暗くなってもなお、拓真は麗蘭から離れようとせず、溢れ出す涙を零していた。
「そうだよな…僕が悪いんだ。僕が…麗蘭を殺したのかもしれないな」
麗蘭を追い詰めたのは間違いなく自分だ、と拓真は項垂れた。
拓真は、目の前の墓前を見つめた。
座り込んでいた拓真は、麗蘭に話しかけるようにぽつりぽつりと話し始めた。
「麗蘭、帰ってきてくれよ。麗蘭がいないと、何も手につかないよ」
そう伝えても、麗蘭の声は聞こえない。麗蘭の姿さえも見つからない。
麗蘭は本当に死んでしまったのだろうかと思うと、拓真の涙は止まらなかった。
冷たい雨が、激しく打ちつける。
それなのに拓真は、立ち上がることもせず墓前に座り込んで泣いていた。
拓真の服はびしょ濡れで、拓真の髪から雫がぽとぽとと落ちた。
「こんなところで何をしているの。たっくん、お願いだから帰りましょ」
降ってきた声に顔を上げると、蘭子が傘を差しながら拓真の隣にしゃがんだ。自分がさしている傘に拓真を入れた蘭子は、行こうと拓真の腕を掴んだが、拓真は動こうとしなかった。
「たっくん、体壊しちゃうよ」
「いいんだ。僕なんて」
「何を言ってるの!だめよ。早く帰って…」
「麗蘭……寒く、ないか?」
拓真はおもむろに立ち上がり、蘭子が持っていたもうひとつの傘を麗蘭の墓の上に被せて濡れないようにした。
「たっくん…」
蘭子は視線を逸らした。
「こんなに、濡れて……寒いだろ?」
拓真は墓石に触れて、優しく撫でた。
「大丈夫。僕が…麗蘭の傘になるから」
拓真は、雨が止むまで麗蘭に傘を差し続けた。