愛は貫くためにある
小鳥の鳴く声で、麗蘭は目を覚ました。静かに目を開けた麗蘭は、ゆっくりと周りを見渡した。

(そうだ…わたし、戻ってきたんだ。拓真さんのところへ)

窓から差し込む光に導かれるように、麗蘭は窓側へと近づいた。

(陽の光が、あったかい…)

麗蘭は眩しい太陽を見上げ、目を細めた。

(んんっ、眩しい…)

そう思った時には既に、遅かった。
目眩がすると思った麗蘭は、床に倒れ込んでいた。

(拓真さん、助けて…たす、けて…)

麗蘭は薄れゆく意識の中でしきりに叫んでいたが、声が全く出せない麗蘭は、口をぱくぱくと動かすことしかできない。麗蘭は声が出ない辛さを、改めて思い知った。

麗蘭は静かに目を閉じた。

「麗蘭〜?れい…」

拓真が麗蘭の居る部屋に入ってきた。
拓真はすぐに異変に気づいた。

「麗蘭!?大丈夫か、麗蘭!?」

拓真は麗蘭を抱き上げ、ベッドへ寝かせた。麗蘭はぐったりしていて、何度ゆさぶっても起きない。
「ごめんな、麗蘭。ほったらかして」
拓真は横になっている麗蘭の前髪を撫でた。頭の芯からピンク色に染まっている麗蘭の髪を見て、拓真は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「あんなに綺麗な…黒髪を…」

ピンク色の髪をした麗蘭はとても可愛い、と拓真は思った。
まるで異世界から来たような、アニメのキャラクターみたいだと思った。
「こんなピンクに染めさせてしまったのは、僕なんだよな」
そう拓真が呟くと、麗蘭が眉根を寄せたのが見えた。

「麗蘭?」

麗蘭が苦しそうに顔を歪めた。

「若っ!」

大知が部屋のドアを開けて勢いよく入ってきた。
「すいませんっ、若っ!」
大知は勢いよく拓真に向かって頭を下げた。拓真は振り返り、深く頭を下げたままの大知を見た。
「大知…どうして麗蘭を見ていなかった?起きるまでしっかり見ていろと、言わなかったか?」
拓真に睨まれた大知は怯んだ。
「すいません…なかなか起きなかったから大丈夫かなと思って、つい…」

大知に、悪気はなかった。

麗蘭に何かあってはいけないと心配になった拓真は、大知に麗蘭をしっかりと見ているよう指示していたのだ。しかし少しの間なら大丈夫だろうと、大知は麗蘭の眠る部屋から出た。そして、今日レストランで出す食材の準備を健としていたのだ。

しかし途中で拓真がいないことに気づいた大知は、拓真に麗蘭を見ているよう指示されたことを思い出し、慌てて麗蘭の居る部屋へと駆け込んだ。
するとそこには、ぐったりとした麗蘭をベッドに寝かせ髪を撫でていた拓真がいた。とても切なげで心配そうな顔で、拓真は麗蘭を見つめていた。

そして、今に至る。
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