愛は貫くためにある
「こんなに零して…どうすんだよ。せっかくのシーツが濡れちゃったじゃないか」
拓真は気だるそうに言った。
「麗蘭には無理だ。今の麗蘭には無理なんだよ。麗蘭は、手を動かせないんだ。それは麗蘭が一番よくわかってるだろ?」
(そんなこと、わかってるよ。
でも、無理だなんて、どうしてそんな言い方するの…)
「無理をするからこういうことになるんだぞ。いいか?無理はしなー」
麗蘭は耐えきれずに、大知が作った粥の入った皿を丸テーブルの上にきちんと置いた。
「麗蘭?」
麗蘭はベッドから飛び降り、走ってドアへと向かった。
「おい、麗蘭。どうしたんだよ」
麗蘭は、きっ、と拓真を睨んだ。
『拓真さんなんか、大嫌い』
目に涙を浮かべて、麗蘭は部屋を出ていった。
「れ、麗蘭?ちょ、ちょっと待てよ…」
拓真はすぐに麗蘭を追いかけた。
麗蘭は走って一階へ降りようとしたが、降りる前に体力を消耗してしまったのか倒れそうになった。
「おっと、あぶねえ」
拓真が、麗蘭を抱きとめた。
麗蘭は目を閉じていた。
「…ったく、世話のやける…」
拓真は、目を閉じたままの麗蘭を部屋のベッドへと寝かせた。
「若。姐御になんかしたんすか」
健が溜息をついた。
「何かって…わかんない」
「わかんないって…」
麗蘭は、拓真に甘えなくなったどころか語ってもくれない。いつもなら口を
ぱくぱくさせて話したいことを言ってくれるのに、それさえもしなくなった。
「思い当たることは無いんすか」
「うーん、特には…」
「姐御、若とはもう話さないって」
「は?麗蘭が言ったのか?」
ええ、と健は頷いた。
「そんなに、嫌われるようなこと言ったかな…?」
「ちゃんと話してみたらどうっすか」
「…そうだな。ちゃんと向き合わないとな」
拓真は、麗蘭の居る部屋へ入った。
「麗蘭」
麗蘭はベッドに横になったまま、視線だけを拓真に向けた。
「話そう。ちゃんと、話そうよ」
『……』
「お願い、麗蘭」
『…拓真さんひどい』
「え?ひどいって……」
拓真は頭をがしがしと乱暴に撫でた。
『拓真さんわからないんですか?わたしがなぜ怒ってるか』
「わかんない……」
拓真は、本当に思い当たる節がないようで、教えてよと麗蘭に言った。
『呆れた。本当にわからないんですか?』
「う、うん…」
麗蘭は深くため息をついた。
『今のわたしは、手が動かせない。
無理をするんじゃない。わたしは、手を動かせないから無茶はするなと』
ああ、と拓真が呟いた。
「それがなんだ?」
麗蘭が首を傾げた。
「そんなことで怒ってるのか?」
『…!』
「僕は心配をして言ってるんだ。麗蘭が無理をして体を壊したりしたらって。麗蘭が手を動かせないのは事実だし、無理して動かしても体力を無駄に消費するだけだろ?」
麗蘭は悲しかった。
そんなことを、大好きな拓真に言われるだなんて思ってもみなかった。
やはり拓真には自分の気持ちはわからないのだと麗蘭は肩を落とした。
(そうよね。拓真さんにわたしの気持ちをわかれだなんて言っても、無駄なことよね。馬鹿みたい、わたし。拓真さんに少しでもわかって欲しくてがんばったのに…。でも、もうがんばるのはやめよう。拓真さんにわたしの気持ちなんて、わからないんだ。やっぱり、拓真さんは遠い存在なんだなあ…。)
麗蘭はベッドに深く潜り込み、目を閉じた。
拓真は気だるそうに言った。
「麗蘭には無理だ。今の麗蘭には無理なんだよ。麗蘭は、手を動かせないんだ。それは麗蘭が一番よくわかってるだろ?」
(そんなこと、わかってるよ。
でも、無理だなんて、どうしてそんな言い方するの…)
「無理をするからこういうことになるんだぞ。いいか?無理はしなー」
麗蘭は耐えきれずに、大知が作った粥の入った皿を丸テーブルの上にきちんと置いた。
「麗蘭?」
麗蘭はベッドから飛び降り、走ってドアへと向かった。
「おい、麗蘭。どうしたんだよ」
麗蘭は、きっ、と拓真を睨んだ。
『拓真さんなんか、大嫌い』
目に涙を浮かべて、麗蘭は部屋を出ていった。
「れ、麗蘭?ちょ、ちょっと待てよ…」
拓真はすぐに麗蘭を追いかけた。
麗蘭は走って一階へ降りようとしたが、降りる前に体力を消耗してしまったのか倒れそうになった。
「おっと、あぶねえ」
拓真が、麗蘭を抱きとめた。
麗蘭は目を閉じていた。
「…ったく、世話のやける…」
拓真は、目を閉じたままの麗蘭を部屋のベッドへと寝かせた。
「若。姐御になんかしたんすか」
健が溜息をついた。
「何かって…わかんない」
「わかんないって…」
麗蘭は、拓真に甘えなくなったどころか語ってもくれない。いつもなら口を
ぱくぱくさせて話したいことを言ってくれるのに、それさえもしなくなった。
「思い当たることは無いんすか」
「うーん、特には…」
「姐御、若とはもう話さないって」
「は?麗蘭が言ったのか?」
ええ、と健は頷いた。
「そんなに、嫌われるようなこと言ったかな…?」
「ちゃんと話してみたらどうっすか」
「…そうだな。ちゃんと向き合わないとな」
拓真は、麗蘭の居る部屋へ入った。
「麗蘭」
麗蘭はベッドに横になったまま、視線だけを拓真に向けた。
「話そう。ちゃんと、話そうよ」
『……』
「お願い、麗蘭」
『…拓真さんひどい』
「え?ひどいって……」
拓真は頭をがしがしと乱暴に撫でた。
『拓真さんわからないんですか?わたしがなぜ怒ってるか』
「わかんない……」
拓真は、本当に思い当たる節がないようで、教えてよと麗蘭に言った。
『呆れた。本当にわからないんですか?』
「う、うん…」
麗蘭は深くため息をついた。
『今のわたしは、手が動かせない。
無理をするんじゃない。わたしは、手を動かせないから無茶はするなと』
ああ、と拓真が呟いた。
「それがなんだ?」
麗蘭が首を傾げた。
「そんなことで怒ってるのか?」
『…!』
「僕は心配をして言ってるんだ。麗蘭が無理をして体を壊したりしたらって。麗蘭が手を動かせないのは事実だし、無理して動かしても体力を無駄に消費するだけだろ?」
麗蘭は悲しかった。
そんなことを、大好きな拓真に言われるだなんて思ってもみなかった。
やはり拓真には自分の気持ちはわからないのだと麗蘭は肩を落とした。
(そうよね。拓真さんにわたしの気持ちをわかれだなんて言っても、無駄なことよね。馬鹿みたい、わたし。拓真さんに少しでもわかって欲しくてがんばったのに…。でも、もうがんばるのはやめよう。拓真さんにわたしの気持ちなんて、わからないんだ。やっぱり、拓真さんは遠い存在なんだなあ…。)
麗蘭はベッドに深く潜り込み、目を閉じた。