愛は貫くためにある
大知は、カフェ・テリーヌで何度か会って話したことのある女性に片思いをしていた。その女性は、とてもスレンダーで麗蘭とそっくりだという。
優しくてふわふわな印象は全くと言っていいほど麗蘭に似ていた。
見た目からして、どこかの金持ちの家のお嬢さん、というのが大知の第一印象らしかった。
「その人の名前は?」
健がいきなり話に入ってきた。
「うおう!びっくりした…健、いつからそこに…」
大知は肩をぴくりと揺らした。
「さっきから」
健は笑った。
続きを話せ、と拓真が言ったので大知は続きを話し始めた。
「麗奈ちゃん」
「ふーん?ちゃん付けねえ」
「い、いいじゃないっすかっ!」
大知の抵抗も虚しく、拓真はそれを無視した。
「麗奈ちゃんは…なかなか、自分のことを話したがらなくて」
「それで、大知は自分のことを話してばっかりだと」
「健…仕方ねえだろ。ていうか、話したいし」
大知は溜息をついた。
「でも、親同士が決めた婚約者がいるって。それを聞いて、麗奈ちゃんとは会っちゃいけないって思って、カフェ・テリーヌには近づかなかったんだ」
麗蘭は、ごくりと唾を飲んだ。
(麗奈って、もしかして…)
麗蘭は大知の言葉を待った。
「久しぶりにカフェ・テリーヌへ行ったら、麗奈ちゃんがいて。俺に気づいた麗奈ちゃんは、俺に駆け寄って…」
「キスしたか?」
「え!?い、いえっ!キスされてないし、まだキスしてませんよ!」
「へえ…まだ、ねえ…」
拓真がにやりと笑った。
「うわー、若の罠にはまった…」
大知はガックリと肩を落とした。
『それでそのあと、どうなったの?』
麗蘭が興味津々に尋ねた。
「ああ、それで…俺は手を引っ張られて、カウンター席に隣同士に座ったんすよ。麗奈ちゃん、俺がずっと来てなかったから、なにかしたんじゃないかって気に病んでたみたいで」
『そうだったんだ…』
俯く麗蘭をよそに、健が質問した。
「あのさ、それだけ?なんか言われたんじゃねーの?」
健の鋭い質問に、大知は苦笑いした。
「ああ、言われた。どうして来なかったの?って。寂しかったって」
「脈アリじゃねーの?」
健は拓真の隣でにやにやしていた。
健の隣にいた拓真は、くっくっ、と笑いをこらえるかのように口角を上げていた。
「ていうか、若。笑ってんじゃないっすか」
「悪い悪い。いや、大知の浮ついた顔を思い出したら、つい…くくく」
「ひでえ!まじで若ひでえっすよ!
姐御!聞きました?今の。なんか言ってくださいよ〜」
『拓真さん、あんまり大知さんいじめちゃだめ。大知さん、意地悪な拓真さんを許してね』
「ええ〜もう、姐御は若に甘いんすよお〜」
『ごめんね、わたし、拓真さんの婚約者だから…』
麗蘭は照れながら俯いた。
「ん、そういうことだ。許せ、大知」
拓真は麗蘭の腰を引き寄せた。
「偉そうに…」
大知の言葉を拓真が聞き逃すはずがなく、
「覚えてろよ」
という拓真の言葉に、大知は咄嗟に健の影に隠れたのだった。
優しくてふわふわな印象は全くと言っていいほど麗蘭に似ていた。
見た目からして、どこかの金持ちの家のお嬢さん、というのが大知の第一印象らしかった。
「その人の名前は?」
健がいきなり話に入ってきた。
「うおう!びっくりした…健、いつからそこに…」
大知は肩をぴくりと揺らした。
「さっきから」
健は笑った。
続きを話せ、と拓真が言ったので大知は続きを話し始めた。
「麗奈ちゃん」
「ふーん?ちゃん付けねえ」
「い、いいじゃないっすかっ!」
大知の抵抗も虚しく、拓真はそれを無視した。
「麗奈ちゃんは…なかなか、自分のことを話したがらなくて」
「それで、大知は自分のことを話してばっかりだと」
「健…仕方ねえだろ。ていうか、話したいし」
大知は溜息をついた。
「でも、親同士が決めた婚約者がいるって。それを聞いて、麗奈ちゃんとは会っちゃいけないって思って、カフェ・テリーヌには近づかなかったんだ」
麗蘭は、ごくりと唾を飲んだ。
(麗奈って、もしかして…)
麗蘭は大知の言葉を待った。
「久しぶりにカフェ・テリーヌへ行ったら、麗奈ちゃんがいて。俺に気づいた麗奈ちゃんは、俺に駆け寄って…」
「キスしたか?」
「え!?い、いえっ!キスされてないし、まだキスしてませんよ!」
「へえ…まだ、ねえ…」
拓真がにやりと笑った。
「うわー、若の罠にはまった…」
大知はガックリと肩を落とした。
『それでそのあと、どうなったの?』
麗蘭が興味津々に尋ねた。
「ああ、それで…俺は手を引っ張られて、カウンター席に隣同士に座ったんすよ。麗奈ちゃん、俺がずっと来てなかったから、なにかしたんじゃないかって気に病んでたみたいで」
『そうだったんだ…』
俯く麗蘭をよそに、健が質問した。
「あのさ、それだけ?なんか言われたんじゃねーの?」
健の鋭い質問に、大知は苦笑いした。
「ああ、言われた。どうして来なかったの?って。寂しかったって」
「脈アリじゃねーの?」
健は拓真の隣でにやにやしていた。
健の隣にいた拓真は、くっくっ、と笑いをこらえるかのように口角を上げていた。
「ていうか、若。笑ってんじゃないっすか」
「悪い悪い。いや、大知の浮ついた顔を思い出したら、つい…くくく」
「ひでえ!まじで若ひでえっすよ!
姐御!聞きました?今の。なんか言ってくださいよ〜」
『拓真さん、あんまり大知さんいじめちゃだめ。大知さん、意地悪な拓真さんを許してね』
「ええ〜もう、姐御は若に甘いんすよお〜」
『ごめんね、わたし、拓真さんの婚約者だから…』
麗蘭は照れながら俯いた。
「ん、そういうことだ。許せ、大知」
拓真は麗蘭の腰を引き寄せた。
「偉そうに…」
大知の言葉を拓真が聞き逃すはずがなく、
「覚えてろよ」
という拓真の言葉に、大知は咄嗟に健の影に隠れたのだった。