愛は貫くためにある
「なんだよなんだよ、みんなしてそうやってさ…うおっ!」
大知はぶつぶつ言いながらドアの近くをうろついていると、突然ドアが開いたので大知は腰を抜かして床に尻もちをついた。
「いってえ…誰だよ…」
視線をあげると、そこには黒髪で肩から10センチほど伸びたセミロングの女性が立っていた。
「ご、ごめんなさい…!」
その女性は、勢いよく頭を下げた。
「え…麗奈ちゃん…?」
大知は目を瞬かせた。ドアを開けて入ってきたのは、今か今と待ち侘びていた、麗奈の姿だった。
「大知さん、お怪我は…」
口元に両手を当てて慌てている麗奈を見て、大知はすっと立ち上がった。
「いや、大丈夫。うん、怪我ないから。大丈夫」
「よかった…」
麗奈は静かに微笑んだ。

麗奈がふと遠くに目をやると、麗奈が小さく声を上げた。
「麗奈ちゃん?」
大知は首を傾げ、麗奈を見た。
「嘘…」
麗奈はゆっくりと、麗蘭の、ところへと歩いていく。
「お姉ちゃん…!」
麗奈はその場に足を止め、叫んだ。
「お姉ちゃん?」
麗蘭の隣にいた拓真が、麗蘭と麗奈を交互に見ていた。
「似てる…」
「若…似てるどころじゃないっすよ。瓜二つ」
健はごくりと唾を飲んだ。
大知は驚きのあまり、麗奈の横顔を遠くで見ながら、口をあんぐりと開けていた。
「あらら?麗蘭ちゃんが二人?」
桃も目をぱちくりさせていた。
「こんなにも似ている人間がこの世の中にいるのか?」
春彦も信じられないといった様子で、カウンターから身を乗り出していた。
「ドッペルゲンガーってやつか?」
健の言葉に、春彦は苦笑した。
「まさか、そんな」
「ですよね」
健は春彦に笑いかけた。
「ドッペルゲンガーでもナントカゲンカーでも、なんでもいいから。とにかく、どういうことなの?」
桃の言葉に、春彦と健は吹き出した。
拓真は笑いを堪えていた。
「桃…ナントカゲンカーってなんだよ」
「と、とにかく!どういうことなのよ」
桃は顔を赤くしながらも、麗蘭を見た。麗蘭が困ったように眉を下げると、麗奈が口を開いた。
「私は、お姉ちゃんのー天野 麗蘭の実の妹なんです」
驚いて石と化していた大知が、ようやく動き出した。
「えっ?麗奈ちゃんが、姐御の妹?」
大知の『姐御』という言葉の意味がよくわからない麗奈は、大知を見て首を傾げた。


「ああ、麗蘭さんのことは姐御って呼んでるんすよ。俺がレストランで働いてるってことは以前に話したと思うんすけど、そのレストランのオーナーが姐御の隣にいる拓真さん。そのオーナーの恋人が、オーナーの隣に立ってる姐御ってわけで…」
「そうなんですね…!」
麗奈は大知の話を目をキラキラさせて聞いていた。
「お、おう…」
大知は麗奈から目を逸らした。

(眩しすぎて、見てらんねえ…)

健と拓真だけが口角を上げていたのを、大知は見逃していなかった。

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