愛は貫くためにある
「いい加減、やめていただけますか?お嬢様を誘惑するのは」
「なんのことっすか?」
大知は勉を睨みながら言った。
「お嬢様の心を乱すのはやめてください」
「乱しているつもりはありませんが」勉は大知に詰め寄った。
「あなたとお会いしてからというもの、お嬢様の心は僕から離れていってしまった。あなたと会う前は僕のことを見てくださっていたのに、今では僕のことを忘れてあなたに夢中になっている」
勉の必死さは、大知にまで伝わっていた。大知はふと、笑みを零した。
「余裕、ないんすね?」
「何を仰りたいのか、わかりませんが」
怒りを必死で堪えている勉を見て、大知は口を開いた。
「川橋さんと麗奈ちゃん…いや、麗奈お嬢様は俺から見てもとてもお似合いです。こんな俺に嫉妬なんかしなくても、お嬢様は川橋さんのことを想っているんじゃないっすか」
勉は、大知の言葉に驚いて銅像のように固まっていたが、しばらくして、ゆっくりと動き出した。
「それは本心ですか?嫌味とも取れますが」
「まさか、本心っすよ。麗奈お嬢様を幸せに出来るのは、川橋さんしかいないと思ってます」
大知は、ふらりと街を歩いている時に、何度か麗奈と勉が楽しそうに寄り添って歩いているところを見たことがあった。お似合いのカップルにしか、見えなかった。麗奈といるべきなのは勉なのだ、と大知は思い知った。
それ以来麗奈と会うことをぱたりとやめた大知は、麗奈への想いを封印することを選んだ。
「大知さん、まさか…」
勉は目を見開いた。
「応援しますよ、川橋さん。…俺は影で、麗奈お嬢様を見守りますよ」
大知は切なげに笑った。
「お嬢様」
勉の声に顔を上げた麗奈は、今にも泣きだしそうだった。
「勉さん、私…」
麗奈の元気がない理由は、勉にはすぐわかった。
「お嬢様は何も悪くありません。きっと、仕事が忙しいのでしょう。気に病むことはありませんよ」
「でも…大知さん、私を避けてるみたい…」
勉を見上げ頬に涙がキラリと光る麗奈を、勉は強く抱き締めた。
「お嬢様を悲しませる男は、誰であろうと僕が許しません。たとえお嬢様の気持ちが大知さんに向いていようとも、僕は…あなたを諦めない。僕は何年でも待ちます。いつまでも…あなたを待ちますから」
「勉さん…」
「こんな僕では大知さんの代わりは務まらないかもしれませんが、大知さんよりも、僕のお嬢様への愛は深い」
更に強く、勉は麗奈を抱き締めた。
絶対に逃がさないと言わんばかりに、強く。
麗奈は抵抗しなかった。
勉の気持ちには薄々気づいてはいたものの、その気持ちには答えられずにいた。勉の気持ちは正直、とても嬉しかった。しかし麗奈は、まだ大知のことが頭から離れなかった。
「なんのことっすか?」
大知は勉を睨みながら言った。
「お嬢様の心を乱すのはやめてください」
「乱しているつもりはありませんが」勉は大知に詰め寄った。
「あなたとお会いしてからというもの、お嬢様の心は僕から離れていってしまった。あなたと会う前は僕のことを見てくださっていたのに、今では僕のことを忘れてあなたに夢中になっている」
勉の必死さは、大知にまで伝わっていた。大知はふと、笑みを零した。
「余裕、ないんすね?」
「何を仰りたいのか、わかりませんが」
怒りを必死で堪えている勉を見て、大知は口を開いた。
「川橋さんと麗奈ちゃん…いや、麗奈お嬢様は俺から見てもとてもお似合いです。こんな俺に嫉妬なんかしなくても、お嬢様は川橋さんのことを想っているんじゃないっすか」
勉は、大知の言葉に驚いて銅像のように固まっていたが、しばらくして、ゆっくりと動き出した。
「それは本心ですか?嫌味とも取れますが」
「まさか、本心っすよ。麗奈お嬢様を幸せに出来るのは、川橋さんしかいないと思ってます」
大知は、ふらりと街を歩いている時に、何度か麗奈と勉が楽しそうに寄り添って歩いているところを見たことがあった。お似合いのカップルにしか、見えなかった。麗奈といるべきなのは勉なのだ、と大知は思い知った。
それ以来麗奈と会うことをぱたりとやめた大知は、麗奈への想いを封印することを選んだ。
「大知さん、まさか…」
勉は目を見開いた。
「応援しますよ、川橋さん。…俺は影で、麗奈お嬢様を見守りますよ」
大知は切なげに笑った。
「お嬢様」
勉の声に顔を上げた麗奈は、今にも泣きだしそうだった。
「勉さん、私…」
麗奈の元気がない理由は、勉にはすぐわかった。
「お嬢様は何も悪くありません。きっと、仕事が忙しいのでしょう。気に病むことはありませんよ」
「でも…大知さん、私を避けてるみたい…」
勉を見上げ頬に涙がキラリと光る麗奈を、勉は強く抱き締めた。
「お嬢様を悲しませる男は、誰であろうと僕が許しません。たとえお嬢様の気持ちが大知さんに向いていようとも、僕は…あなたを諦めない。僕は何年でも待ちます。いつまでも…あなたを待ちますから」
「勉さん…」
「こんな僕では大知さんの代わりは務まらないかもしれませんが、大知さんよりも、僕のお嬢様への愛は深い」
更に強く、勉は麗奈を抱き締めた。
絶対に逃がさないと言わんばかりに、強く。
麗奈は抵抗しなかった。
勉の気持ちには薄々気づいてはいたものの、その気持ちには答えられずにいた。勉の気持ちは正直、とても嬉しかった。しかし麗奈は、まだ大知のことが頭から離れなかった。