Toxic(※閲覧注意)
フロアの入り口を出てすぐの所にある、簡易応接スペースのしきりの前に、ブリリアントの新しい営業担当であろうその人は立っていた。

あら、円香が言った通り、若そうな男性だ。

色白で、思わず見とれるほどに整った顔立ち。

ふわっとセットした黒髪と、シャドーストライプのスーツのさらっとした着こなしが、なかなかお洒落だ。

私と目が合った瞬間、

「ああ、夏目さんですか?初めまして」

明るい声と共に、これでもかという営業スマイルをこちらに向けた。

「ええ、初めまして。訪日外国人チームの夏目です」

私も負けじと、にっこり笑みを返す。

一応『チーム長』という、いわゆる課長のような肩書きがあるが、当然知っているだろうから、わざわざ名乗らない。

ちなみに職場では、結婚していた2年間も旧姓の夏目で働いていた。

営業という仕事柄、とても面倒だから変えなかっただけだが、今となってはとてもホッとしている。

なんだか残念な女だ。

「どうぞ、かけてください」

「失礼します」

その彼は向かいに腰かけると、すぐにすっと名刺を差し出した。

「申し遅れました。今日付けでブリリアントの外国人営業担当になりました、柴宮(しばみや)です」

差し出された名刺を受け取り、軽く目を通す。

名刺には、『外国人営業課 柴宮 大和(やまと) 』と記載されていた。

やまと……ふーん、宇宙戦艦くんか。

くだらないことを考えながら、私も「改めまして」と名刺を差し出した。
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