Toxic(※閲覧注意)
「あー、ありました。このページなんですが」

お目当てのページに辿り着いた柴宮は、こちらに乗り出していた身体をすっと引っ込めた。

ジューシーな残り香が、まだ鼻先をくすぐる。

「実は、レストランを増設いたしまして」

「ええ、それは前の佐野さんから少しお聞きしてますが。この新しいレストランに関しての何か重要なお話があるわけですね?」

私が尋ねれば、柴宮の薄い唇の端がくいっと上がった。

「ええ。実は夏目さんに、とても大切なお願いをしに参りました」

「お願い?」

「はい。端的に申し上げますと、夏目さんに、このレストランを海外代理店に営業してほしいのです」

「営業?!私が?」

あまりに予想外な申し出に、思わずすっとんきょうな声を上げてしまった。

「はい。現在、うちも含めた都内のシティホテルは、たくさんの訪日外国人旅行者様にお泊まりいただいております。しかし、その殆どが宿泊と朝食のみで、夕食にレストランをご利用いただけないのが現状です」

「……ええ、まあ確かにそうですね」

柴宮の言う通り、ホテルにレストランがあるにも関わらず、宿泊と食事は別々にプランニングするのが常だ。

「というわけで、夏目さん、お願いできますか?」

柴宮大和は、にっこりと微笑んで見せた。

というわけで? いやいや、端折り過ぎでしょ!

思わず心の中でツッコミを入れた。
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