Toxic(※閲覧注意)
こんな言い方をするのもいやらしいけれど、ビジネスパートナーと言えど、パワーバランスでは、そもそもうちの方が上だ。

営業の私が営業をかける相手は、あくまで海外の旅行代理店。

対ホテルであれば、彼、柴宮のような営業マンから「うちを使ってください」と営業を受ける立場なのだ。

それなのに、私に「代理店に向けてホテルのレストランの営業をかけてくれ」だなんて、そんな突拍子もない話、聞いたことがない。

「あの、お話が全く見えませんが」

「ああ、すいません。先走りましたね」

柴宮大和は、悪びれもしない様子で微笑んだ。

コイツ……と私は心の中で呟く。

ファーストインプレッションは、馴れ馴れしくてよく舌が回りそうなタイプ。

よく目にするそういった若手営業マンの中では、とても礼儀正しくて腰が低い方ではある。

しかし、何か違和感がある。

見た目から受ける印象よりもやけに落ち着いていて……柔らかい物腰とあどけなさを残した笑顔の裏に、どこか有無を言わさぬ威圧感を漂わせている。

ただの気のせいかも知れないが。
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