Toxic(※閲覧注意)
「…ふうん、私と恋がしたいの?」

私が聞き返すと、柴宮は「ええ」と答え、それからワインを一口飲んで、こちらを見てふっと笑った。

「なに?」

「いや、やっぱり夏目さんって口説かれ慣れてるんだなって。全然動じてくれないし」

「ふふ、動揺させるために言った冗談なの?」

「はは、そんなわけないでしょ」

柴宮は笑ってそう言うと、グラスをそっと置いた。

そして、テーブルの上に置かれた私の左手に手を伸ばして重ねた。

ひんやりとした、綺麗な手。

細く長い指が、すごくセクシーだ。

「ね、どうしたら夏目さんのこと落とせる?」

彼は上目遣いでそんなことを尋ねながら、長い指を絡ませてくる。

指先に走る、甘くてこそばゆい刺激。

指から下腹に向かって、軽い電流が流れた気がした。

……やだ、こんなことくらいでムラッとするなんて、欲求不満かしら。

そういえば、元夫の片桐以外の男に触れられるの、久しぶりかも。

片桐とも最後の半年はそういう行為を全くしていないから、欲求不満になっても不思議ではない。

そんな私の目の前に、とびきり極上の餌が、ぶらんと吊るされている。

柴宮大和は、今すぐ落ちてあげてもいい、一瞬そう思うほどに若くてイケメンで、頭もよくて……正直、とても魅力的だ。

でも。

それじゃ、全然面白くないの。
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