Toxic(※閲覧注意)
ドルチェはレモンのアイス、クリームチーズムースのラズベリー仕立て、それからガトーショコラだった。

どれも見た目がとても可愛らしく、そして見た目以上に美味しかった。

甘いものはそんなに得意じゃない私も、思わず笑みを漏らすほどだ。

前菜からデザートまで、本当に素晴らしかった。

ブリリアントのイタリアンが二ツ星なのは勿論知っていたが、まさかここまでとは。

仕事柄、色々な高級ホテルのレストランで食事をしたけれど、ブリリアントの美味しさは間違いなく群を抜いている。

これで三ツ星じゃないのなら、三ツ星とは何なのだろう。

ミシュラン曰く、「三ツ星はそこで食べるために旅をする値打ちがあり、二つ星は寄り道をしてでもいく値打ちがある」らしいけれど。

食のためだけに旅をすることがない私には、全く理解できない曖昧な評価だ。

「夏目さん、改めて、今日は本当にありがとうございます」

エレベーターに乗り込むと、柴宮は丁寧にそう頭を下げた。

「こちらこそ。とっても楽しかった」

「ボクもです」

エレベーターにそこそこ同乗者がいるからか、柴宮はすっかり元のビジネス顔だ。

「例の和食ビュッフェの件、近日中にメールするんで、よろしくお願いしますね」

そういえば、そんな話もしたな。

すっかり忘れてたけど。

確か、テキトーな和食バイキング、だっけ?

「ええ、私にできる範囲であればご協力いたします」

思わず笑いそうになるのを堪えて、私も仕事の顔で答えた。
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