Toxic(※閲覧注意)
夜遅いので駅まで送りますよ、という柴宮の申し出を快く受け、私は彼と共に駅へと向かうことにした。

しばらく歩いた所で、

「ねえ、夏目さん。連絡先交換してよ」

柴宮がスマホを取り出して言った。

すっかりフランクな話し方に戻っている。

ホテルをかなり離れたからだろう。

「番号なら名刺に書いてあるけど」

「あれ社用でしょ? プライベートなやつ、教えて?」

「えー、どうしようかなあ」

私が迷うふりをすれば、柴宮は

「夏目さんが、私を落としてみてって言ったんでしょ?連絡先くらい教えてくんないとさすがの俺も無理だよ?」

と、呆れ顔で言った。

さすがの俺、なんてさらっと言う辺り、相当自信があるのだろう。

そういう男、意外と好き。

ブサイクが言ったら、死ね!って思うけど。

「はいはい。ちょっと待って、プライベートな方はバッグの奥底に入れてるから、なかなか出てこないんだよね」

私は少し立ち止まって、バッグをガサガサと漁り始めた。

鞄の中身が乱雑なのも、きっと射手座だから、いや、これはO型故だろうか。

「夏目さん、危ないからこっち」

柴宮がそんな私の腕をぐいっと引っ張った。

「えっ、なに?」

「そんな道のど真ん中に立ってたら危ないから」

腕を掴んだまま、柴宮は私をビルの間の細い路地裏に連れていった。
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