Toxic(※閲覧注意)
「はい、ここでゆっくり探して」

「うん、ありがとう」

再びバッグの中を漁り、

「…………あ、あったあった」

やっとスマホを見つけて、パッと顔を上げれば、すぐ目の前に柴宮大和の顔があった。

「……夏目さんて、ほんと綺麗だね」

その色っぽい眼差しに、一瞬目眩がした。

「食べちゃいたいな……」

形のよい唇が、甘い声で囁いた。

ラ・フランスの瑞瑞しい香りが、私を誘う。


けれど、

「……なーんてね」

彼は急に、私から離れた。

「それより連絡先、早く交換してよ」

「……あ、うん」

肩透かしをくらった気分になった。

おかしい、キスしようとしたのはあっちなのに。

まるで私がキスしたかったみたいだ。

……ふふ、柴宮大和、本当に面白い。


手早く連絡先を交換して、私達は大通りに戻り、また歩き始めた。

「ねえ、夏目さんって、どういう男が理想?」

「理想の人?」

「うん」

「……私の心を、永遠に掴まえてくれる人」

私が答えると、柴宮大和は、

「そう。じゃあ掴まえてあげるから、後悔しないでね」

思わずため息が出そうなほど、艶やかに笑ってそう言った。



< 31 / 123 >

この作品をシェア

pagetop