Toxic(※閲覧注意)
3:ご褒美
【3:ご褒美】


うちの繁忙期は、本当に洒落にならないくらい忙しい。

4月に入るとその忙しさはますます激しくなり、私は毎日のように残業し、ついでに休日出勤までする始末だ。

「島根さーん。さっき頼んだホテルとレストランの仮押さえ、何件終わった?」

メールをチェックしながら、私は部下の島根さんに声をかける。

もうすぐ定時だというのに、今日中に見積りを送らなくてはいけないツアーが、まだ5件もあるのだ。

他にもやることはたくさんあるのに。

本当にうんざりする。

「あと1件です」

「じゃあ終わった4件は私にメールして。あと1件は?いつ終わりそう?」

代理店への見積りメールも島根さんに頼めると楽なのだが、残念ながら彼女は英語が苦手だ。

読むことはできるけれど、書けないらしい。

だから彼女に任せるのは、ホテルやレストランの予約など日本語でできる仕事や、顧客データや請求書などの単純なアルファベット入力のみの仕事だ。

しかし、英語が苦手という点を差し引けば、島根さんは仕事も速く正確で非常に優秀だ。

彼女がいてくれて、私の負担はかなり軽減されている。

軽減されてこの仕事量か……オンシーズンは毎度覚悟しているが、今年は特に忙しい。

「そうですね、ブリリアントからのコールバック待ちなので、なんとも」

島根さんが席を立ち、シュレッダーに向かいながら言った。

ブリリアント……柴宮大和か。

そういえば彼、どうしてるんだろう。
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