Toxic(※閲覧注意)
あの食事の夜からそろそろ2週間が立つのに、柴宮からは全く連絡がなかった。

まあ、彼も当然オンシーズン真っ只中で、とても忙しいのだろう。

でも、デートのお誘いはともかく、メッセージの1つくらいよこしたっていいのに。

落とすって言ったくせに、完全に放置じゃん。

……別に、いいけど。

「わかった、その件は私が対応するから、島根さんはもう上がっていいよ」

「え、でも、これから請求書出しが」

「あれは急ぎじゃないから明日でいいよ。島根さん今週ずっと残業でしょ?今日は金曜日だし、たまには早く帰ったら?」

「ありがとうございます、夏目さん!」

島根さんは嬉しそうに言うと、シュレッダーを終わらせて席に戻った。

そして、すぐにタイムシートを持ってきた。

「実はこのあと、彼と食事の約束してるんです。助かります」

花の金曜日、カレシと食事ですか、ほんと幸せそうでいいよね、若者は。

なんてすっかりババ臭いことを思いながら、彼女のタイムシートに印鑑を押した。

「はい、お疲れ様。素敵なディナーを」

「ありがとうございます、お疲れ様です」

ペコリとお辞儀すると、あっという間にデスクを片付けて、風のように去っていった。

さて、予定のないオバサンは、代理店に見積りメールでも作りますか。

私はうーんと大きく伸びをして、PCに向き直った。

あーあ、今夜も遅くまで残業だ。
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