Toxic(※閲覧注意)
飲み物がビールからハイボールに変わった頃には、私が崖っぷちに立たされている話は一旦終わり、円香の家庭の話に移った。

円香の家はいわゆる二世帯住宅、つまり、旦那様のご両親と同居しているのだ。

もし元夫の親と同居していたら……想像したら息が詰まりそうになった。

夫と暮らすだけでも不自由過ぎてギブアップした私には、到底無理だろう。

でも、円香は比較的いい関係を築けているようだ。

円香が会社に復帰できたのも、旦那様のご両親が子供達の面倒を見てくれているからだ。

それでも不満はあるらしく、「最近、お義母さんが育児に口出し過ぎなのよね」とうんざりした顔で言った。

「口出しって?」

「ほらうち、上の子が幼稚園上がるでしょ?英会話やらせろだの、ピアノやらせろだの……小さい内に身につけさせないとって。私はのびのび育ってくれればそれでいいのに」

「教育ママ……あ、おばあちゃんか」

「そ。善意だからタチ悪いのよね」

そう言って、円香はハイボールをグビグビと飲んだ。

相変わらずの飲みっぷりだけれど、まだ4杯目なのに、よく見ると頬がほんのり赤い。

出産でしばらく禁酒していたせいで、多少は弱くなったのかもしれない。

「まあ、テキトーに流してるけどね」

円香はだし巻き玉子の中心をほじくりながら、笑って言った。

中心から箸つけるなんて……そんな奇妙な食べ方する人、やっぱり他に知らない。
< 6 / 123 >

この作品をシェア

pagetop