Toxic(※閲覧注意)

うちの高校は、名門進学校として有名な女子高だった。

アヤと同じクラスになったのは、高校3年生の時。

元々地味な顔の作りをしている上に、お洒落には興味がないらしく、真っ黒な髪を短いおかっぱにしていて、コケシみたいな子だと思った。

私は当時、どちらかと言うと派手で賑やかな子達とつるんでいたが、アヤはいつの間にかそのグループの中にいた。

と言っても、お昼を一緒に食べたり、移動教室や体育で一緒に行動する程度。

大人しく、口数も少なめで、でも決して暗いわけではない。

いつも私達のキャピキャピした話を、楽しそうににこにこして聞いているような子だった。

きっとアヤのことを誰に聞いても、大人しいけれどとてもいい子だと言う。

けれど、私は知っているのだ。

テストの度にいつもアヤより成績のいい私に、恨みがましい視線を送っていたことを。

「響子ちゃんは美人で頭もよくて、羨ましいな」

ある日そう言ったアヤの目が、全く笑っていなかったことも。

私のお気に入りだった手鏡を、"わざと"落として割ったことも。

大学受験シーズンも佳境に入ってくる秋、私は学校から国立の推薦をもらって楽勝ムードだった。

ところが。

「夏目、お前タバコ吸ってるって本当か?」

ある日、担任にそう詰め寄られた時は、推薦どころか危うく停学になりそうで、本当に焦った。

一体誰が告げ口したのだろう、しかもこんな、ちょうど推薦をもらったタイミングで。

なんとか誤魔化して事なきを得たけれど……おかしい。

私は誰かに見つかるような、そんなくだらないヘマはしない。

私が喫煙するのを知っていたのは、仲のいいグループの子だけだ。

証拠はない……けれど、確信があった。

チクったのは、あのコケシ女だ。

だってあの子は、私のことが嫌いだもの。
< 69 / 123 >

この作品をシェア

pagetop