Toxic(※閲覧注意)

「……あーやだ。女の世界って怖っ」

私の思い出話を聞き終えた円香が、大袈裟に言った。

「で、結局犯人はコケシだったの?」

「さあ。うら若き乙女だった、当時の私の主観だからね。卒業以来アヤには会ってないし。真相は闇の中だよ」

「誰がうら若き乙女よ。ちょーギャルだったくせに」

円香は鼻で笑った。

「円香だって」

随分前だが、円香と私は笑い種に、互いの若い頃の写真を見せ合ったことがある。

2人共、信じられないくらい気合いの入った田舎のギャルだった。

「……まあとにかく、その陰険地味コケシちゃんが、自分より幸せなのが気にくわない、ってわけね」

「だって、なんかムカつくじゃん?」

「ふーん。アンタでも、他人に嫉妬することがあるんだね」

「嫉妬?! 全然違うから!やめて!」

私は思わず声を荒げて抗議した。

なんで私が、あんなコケシなんかに嫉妬しなきゃいけないの。

「あら、違うの?…………あ、ねえ響子、ケータイブンブン言ってるわよ」

「え?……あ、ホントだ。また弘美かな。もうコケシの話はうんざりなんだけど」

愚痴りながらトークアプリを起動すると、弘美ではなく、柴宮大和からのメッセージが届いていた。

『明日の夜、デートね』

……ほんと、王様はいつも一方的なんだから。

とりあえず「りょ」と返して、また円香に向き直れば、

「彼からでしょ? 顔がニヤけてるわよ」

と指摘され、「ぜ、全然ニヤけてないし!」とまるでツンデレみたいに返してしまった。

いい年こいて、バカみたい。
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