Toxic(※閲覧注意)
ようやく仕事を切り上げたのは、夜の9時半。

バカみたいに混んでいる電車に揺られ、残り少ない貴重な体力がどんどん削られていく。

あまりの混み具合にスマホをいじるのも躊躇われ、何かをしようと思っても、イヤホンで音楽を聴くのが限界だ。

しかしそれも、疲労のせいでやけに煩く感じてしまう。

それにしても、毎日毎日どうしてこうも混んでいるのか。

遅い時間だというのに、周りは私のような仕事帰りのOLやサラリーマンだらけ。

酒が入っている風でもないから、みなこの時間まで働いていたのだろう。

そうか、実はみんな午後からフレックス出勤してて、この時間に帰るのが普通なのかも。

……いや、そんなわけないか、だって朝の通勤ラッシュ、ヤバいもん。

どいつもこいつも社畜だな、私もだけど。

仕事はわりと好きだし、なにより、バリバリ仕事をこなすデキル女でいたい。

そして頑張った自分へのご褒美に、イケメンとスタイリッシュな恋をする。

そうやって、かっこよく生きていたかった。

けれど、実際はどうだろう。

キャリアウーマン通り過ぎてただの社畜だし、恋愛は毎度うまくいかないし、やっと結婚したかと思えば、2年で破綻して38でバツイチ。

まあそもそも、結婚したこと自体が間違いだったのだ。

そこそこの年齢になって、独り身の寂しさ故に、人並みの幸せなんてものに一瞬でも憧れてしまったせいだ。

らしくないことは、しない方がいい。

でも……。

なら私の幸せはどこにあるのだろう。
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