Toxic(※閲覧注意)

大和が連れてきてくれたのは、繁華街の一本裏にあるお好み焼き屋だった。

「こんな所にお好み焼き屋さんなんてあったんだ」

「俺の職場御用達の店なの。うまいし腹いっぱいになれるよ」

ビールで乾杯をして、まずは牛すじキャベツやホルモンなどの鉄板焼きをいただく。

ハニーバターアーモンドしか食べていなかったせいか、香ばしい油の匂いを嗅いだだけで、腹の虫がぐうぐうと煩く騒ぎ立てた。

焼けたホルモンをパクりと口に運ぶ。

ああ、めっちゃうまい。

「なんか日本!って感じ。幸せ」

「先週も寿司食ったのに? 」

そう言われてみれば、先週のデートは花村で超高級な寿司をご馳走になっている。

「花村のお寿司は最高だったけど、なんていうか、和食じゃなくてインバウンド料理でしょ?」

「インバウンド料理? あー、こういう仕事してるとわからなくもないね。和食っていうか、外人が好きな料理」

「そうそう。外国ですか?みたいなチームで働いてるから、純粋な和が恋しくてしかたなくなるの」

「B級グルメって純粋な和?」

大和は可笑しそうに言った。

「ね、そういえば響子って、どうして旅行会社に入ったの?」

「私? 私は単純に、旅行が好きだから。まあ、最近忙しくて旅行なんて全く行けないけど」

「はは、人の旅行の世話ばっかりしてんだ?」

運ばれてきたお好み焼きの種を混ぜながら、大和は笑って言った。

「そうそう。いいなあ、旅行。こっちは旅行なんて新婚旅行以来してない…………あ」

結婚していたことを隠すつもりもなかったが、つい口が滑ってしまった。

しかも今の言い方だと、もう離婚したという事実が全く伝わらない。

けれど、大和は全く気に止めない様子で、

「じゃあ今度、一緒にどっか旅行行く?」

と笑った。

なにそれ、どうして気にしてくれないの。
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