Toxic(※閲覧注意)
私が苦い思い出に眉をしかめていたら、

「それにしても、久しぶりに育児と家事から解放されて、ほんっと幸せ!」

円香が、うーん、と思い切り伸びをしながら言った。

「なんか……結局、結婚って不自由だよね」

私はため息をつきながら言った。

私の不自由とは形は違えど、自分の時間が持てないことには変わりない。

「そうね、確かにそうね。でも……まあ、なんだかんだ言っても、子供は可愛いわよ」

「そりゃ、そうだろうね」

そう答えたけれど、本当はよくわからない。

いわゆる「こども」が可愛いのは理解できる。

でも、38にして、出産も育児もまだ経験していない私には、自分の子供の可愛さなんて、到底わかるはずもない。

「響子にも子供がいたら、結婚生活も少しは違ったかもね」

円香の言葉に、私は軽く笑みだけ返した。

子供がいたら……か。

実は私は、子供を産むことができない体だ。

今のところ、だけれど。

夫からの束縛がよほど大きなストレスだったのか、いつからか無排卵症になってしまったのだ。

治るらしいが、いつ治るのかはわからない。

『子供はまだなの?』

『早くしないと、響子さん、年齢的にそろそろ出産できなくなるんじゃないの?』

『大丈夫?まさか更年期じゃないわよね?』

お義母さんに散々言われたイヤミを思い出して、私は心の中で「黙れババア」と舌を出した。
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