Toxic(※閲覧注意)
ブリリアントと言えば、国内最大のホテルチェーンだ。

主要都市全てに直営があり、グループホテルは国内だけでなく、海外にもいくつもある。

ブリリアントは日本のホテル業界の頂点、言わば王様なのだ。

社長の息子ということは、行く行くは大和がホテル王になるということ?

あれ、大和がホテル王って、なんかいかがわしい。

「俺のじいちゃんが、1964年に会社を設立したわけよ。名前が輝夫(てるお)だからブリリアント。なかなか洒落てるよね」

「へえ……」

……いやいや、そんな話は今はどうでもいい。

そんなことよりも。

「ねえ、なんで社長の息子が営業職なんてやっているの?」

「うーん、話すと長いんだけど」

大和は箸を置き、タバコに火をつけると、ブリリアントと自分の関係について話し始めた。

私はその話を、同じようにタバコを吸いながら、ひたすらぽかんとして聞いていた。

話を整理すると、彼は柴宮家の三男で、会社を継ぐのは一番上の兄。(つまり、ホテル王にはならない。残念だ)

大和は大学卒業後、海外に留学し、20代は殆ど海外にいた。(本人曰く、プラプラしていたそうだが、ブリリアントの海外支店にいたのでは?)

親に戻ってこいと言われて、渋々戻る。

いきなり重役のポストを用意されるも反発して、法人営業部へ。

今年の3月末、海外営業部に異動。

今回の人事異動は、長年インバウンド担当を希望し続けた結果らしい。(訪日営業のどこにそんな魅力があるのか)

職場では、社長の息子であることは公言していない。(気を使われずに普通に働きたいから、だそうだ)

こんな所だろうか。

「だから、自分んちだからいると言えばそうなんだけど、今のブリリアントは俺にとってただの職場だし、この仕事は好きでやってるよ」

大和はそう言って、タバコをもみ消した。
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