Toxic(※閲覧注意)
予期せぬとんでもない話をカミングアウトされて、茫然としてしまったが、まあ結局、大和は大和だ。

私が何かを気にするという立場でもない。

ただ、彼のやけに堂々と落ち着いた立ち居振る舞いは、そういう家柄というか血筋の人間だからなのか、と妙に納得した。

あと、出会い頭にキスしたり、ハリウッドばりに派手な演出が好きなのは、海外生活が長かったせいか?

……いや、これはただの彼の趣向かも、セックスも派手で情熱的だし。

「でも、重役のポスト蹴ってまで営業やるなんて、なんか意外」

人の上に立つことこそ彼にとても似合いそうなのに、そう思って私が言うと、大和は真面目な顔をした。

「そう? ……別に、綺麗事を言うつもりはなくてね。コネを利用してでも、やりたいことをやればいいんだよって思ってる」

「うん」

「俺がやりたいのは営業だし、今は現場にいたいんだよね。今の俺にコネはむしろ邪魔ってだけ」

そう言われると、なんだか彼らしい気もした。

欲しいものは絶対に手に入れる主義、つまりやりたいことのためなら、コネも捨てるわけだ。

「とにかく三男だしさ、うちのことはあんまり関係ないわけ。もちろん家は金持ちだけど、俺は庶民の暮らししてるし?」

ちゃんと付き合っているわけでもないのに、花村でデートしてティファニーをプレゼントだなんて、充分庶民じゃない気もするが。

「そういえば……大和って独り暮しなの?」

家と俺の暮らしは別と言い張る彼に、何の気なしにそう尋ねた。

「ん?……あれ、言ってなかったっけ?」

「え、なにを?」

「俺、結婚してるよ?」

「……………………は??」
< 82 / 123 >

この作品をシェア

pagetop