Toxic(※閲覧注意)
美容院が終わって、ネイルサロンでマツエクをつけてもらいながら、ジェルネイルをしてもらった。

本当はマツエクなんてする予定はなかったけれど、鏡で自分を正しく認識した今、一切の妥協は許されない。

今晩から、円香にもらった韓国のパックもちゃんとしよう。

あとはダイエット、これはさすがに同窓会には間に合わないだろうけど、今後のため。

私は「何でもできる綺麗でカッコいい女性」でいたいのだ。

そうじゃない自分なんて、知らない。

こんな見窄らしいオバサンの自分なんて。

ヘアスタイルを整え、マツエクとネイルをした自分の姿を駅のトイレの鏡で見たら、さっきよりはだいぶ見違えた気がして少しホッとした。

でも、自分の首元に光るタンザナイトを見て、やっぱり鏡を割りたくなった。

私はいつまで、この「王様の首輪」を付け続けるつもりなのだろうか。

『好きだよ』

あんな嘘つきな男、忘れてしまえばいい。

奥さんがいるくせに本気で好きだなんて……本気の定義を教えてほしいくらいだ。

彼の言葉の何が本当で何が嘘だったのか、今となってはもうよくわからない。

けれど……。

大和は唯一、本当のことを言った。

『絶対に本気にさせてあげる』

彼のことが本気で欲しくて仕方ない。

決して報われてはいけないこの気持ちは、あまりに心を締め付けるから……愛というよりはいっそ憎悪に似ている気がした。
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