Toxic(※閲覧注意)

家に帰ってから、私は鶏肉をネギと生姜で茹でて、棒々鶏を作った。

それから、トマトと卵のスープ、あとはモヤシのナムルも作った。

これが今日の夕飯、全てダイエットを考慮したメニューだ。

炭水化物抜きはあまりよくないと噂されているが、手っ取り早く痩せるにはこれが一番なのだ。

食べながらぼんやりとテレビと観ていたら、テーブルの上のケータイが震えた。

……もしかして、大和?

一瞬でも期待してしまう自分が情けない。

私は今さら、大和から何を言われたいのだろう。

例えば「好きだよ」「会いたいよ」……そんな言葉をもらって、私はどうする気なのか。

もう仕事以外で会うつもりもないのに。

まあ、こんなこと考えるのは無意味だ。

……だって、きっともう、連絡なんて来ない。

彼のアバンチュールに付き合えない私は、彼にとってもう、何の価値もないはずだから。

軽くため息をつきながら、ケータイを手に取った。

あーあ、最近ため息しかついてない。

メッセージは円香からだった。

『響子今、赤坂にいたりする?』

赤坂? ずいぶん唐突な話だ。

「いないけど、なんで?」

『どこにいるの? てゆーか今、片桐さんと一緒にいたりする?』

円香から送られてきた文面に、私は思わず「は?」と声に出した。

大和ならともかく、なぜ前夫の片桐の名前が?

大和が既婚者でもう会わないと決めたことを、私はまだ円香に話していなかった。

もう少し気持ちの整理がついたら話そう、そう思っているだけなのだけれど。

情けないことに、全く整理がつかない。
< 88 / 123 >

この作品をシェア

pagetop