Toxic(※閲覧注意)
「いるわけないし、今家で1人だよ」

とりあえず、円香にそう返した。

『そっか。あのね、さっき赤坂で片桐さん見かけたのよ』

「うん、まあ赤坂辺りだからね、彼の職場」

だから、私は赤坂にはあまり近づかないようにしているのだ。

会いたくないというよりは、会ってもどう接していいのかわからないからだ。

元彼ならともかく、元夫との付き合い方なんて私は知らない。

『片桐さん、女連れだったのよ』

円香から送られてきた意外なメッセージに、私は「へえ」と声を漏らす。

あの、死ぬほど私を束縛した片桐に、もう女ができているとは。

随分あっさり乗り換えるのね、まあ好きにすればいいけど。

「そうなんだ、で?」

円香に返事を打ちながら、私は急に、ある可能性を思い付く。

……それか、私と結婚している頃から、実はその女と不倫してたりとか?

全くあり得ない話ではない。

あんなに私を束縛した片桐が、あまりにもあっさり別居や離婚を受け入れたことに、少し違和感を感じたのだ。

でも、今となってはどうでもいいこと。

とにかく結婚生活は終わったのだ、私がそう望んで。

『その、片桐さんの連れてた女がね、顔は見えなかったけど、ヘアスタイルとか服のセンスとか、背格好とか? とにかくね、雰囲気がそっくりだったのよ』

「そっくり? 誰に?」

『アンタに』


円香から送られてきた4文字を見た瞬間、鳥肌が立った。

……気持ち悪い。

それは私の理解を越えていて、背筋が凍った。
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