Toxic(※閲覧注意)
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金曜日が来ると、いつも憂鬱になる。

大和が私をデートに誘ったのは、決まって金曜日だったから。

と言っても、彼とデートをしたのはたった2回、最初のブリリアントでのディナーを入れたって3回だ。

あ、あのイタリアンディナーは水曜日だったかもしれない。

とにかく、たった3回会って、たった一度抱かれた、それだけの男。

なのに私の心を捉えて離さない。

変な話、もう彼に関わらないと決めたあの瞬間に、私は本当に彼に落ちたのだ。

求めてはいけないからこそ、強く恋い焦がれるのかもしれない。

こんな恋があるなんて。

狙った獲物を確実に落とす、そんなハンターのような恋しかしていなかった私にとっては、晴天の霹靂だ。

仕事の合間、喫煙所で一服がてらケータイをチェックしたら、メッセージが届いていた。

今日は金曜日だし、もしかしたら……と懲りもせずにバカみたいな淡い期待を胸に、通知をタップする。

そんなわけ、ないのに。

『仕事落ち着いた? 軽くメシでもどう?』

なんだ、マサトくんか。

需要と供給のかみ合わなさがすごい。

彼には申し訳ないが、あまりにガッカリして思わずため息が漏れた。

全く振り向かない私に、ずっと好意を寄せるマサトくん。

2年前に私が結婚しても彼の気持ちは変わらず、一度片桐に連絡先を消されるほどラブコールして来る時期もあった。

そんなマサトくんを、私は「狩りのセンスがない」と内心バカにしていた。

けれど……。

今の私は、マサトくんと同じだ。

彼は4年間ずっと、こんな消化できない想いを抱えているのだろうか。

そう思ったら、マサトくんに対して初めて胸が痛んだ。

私はなんて酷い女なのだろう。

離婚したこと、そろそろ話そうかな。

……やめよう。

無駄に期待させて、何がしたいの、私。
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