Toxic(※閲覧注意)

夜7時前、ドイツの代理店からのメール返信を待っていた私は、ついに諦めてPCの電源を落とした。

イザークのヤツ、夕方までに回答するから待っててくれって言ったくせに。

名前がイケメンぽいから待っててやったけど、残念ながら、もうタイムリミット。

私はこれから、人と会う約束がある。

デスクの上のスマホが震えて、「メッセージを受信しました」という表示が現れた。

『下に着いたよ、待ってるね』

「了解」

私はそう返信しながら、足早にフロアを出た。

……散々迷った。

迷って迷って……結局会うことにしたのだ。

「お待たせ」

私が言うと、久しぶりに会った彼は「全然」と穏やかな笑みを見せた。

私は今から、マサトくんとごはんを食べに行く。

私がいつものように「残業続きでぐったりしてるから」とやんわり断ったら、「ごめん。どうしても話したいことがあるから、1時間だけ付き合って」と返ってきたのだ。

彼がそんな風に食い下がったのは初めてで、とても戸惑った。

いろいろと疲れているのは事実だし、誘いに応じるのは気を持たせるだけだと思って、断ろうとしたけれど……結局、話の内容が気になって、会うことに決めたのだった。

「お腹空いてるよね? とりあえず、どっか飯屋入ろう」

「うん、そうだね」

マサトくんと並んで歩き出す。

金曜日の夜なのに、私の隣にいるのは、どうして大和じゃないのだろう。

そう思ってしまった自分に腹が立った。

……もう嫌だ。

いっそマサトくんと付き合ってしまえば、大和を忘れられるのだろうか。

バカだ私、何考えてるの?
< 91 / 123 >

この作品をシェア

pagetop