Toxic(※閲覧注意)
夜7時前、ドイツの代理店からのメール返信を待っていた私は、ついに諦めてPCの電源を落とした。
イザークのヤツ、夕方までに回答するから待っててくれって言ったくせに。
名前がイケメンぽいから待っててやったけど、残念ながら、もうタイムリミット。
私はこれから、人と会う約束がある。
デスクの上のスマホが震えて、「メッセージを受信しました」という表示が現れた。
『下に着いたよ、待ってるね』
「了解」
私はそう返信しながら、足早にフロアを出た。
……散々迷った。
迷って迷って……結局会うことにしたのだ。
「お待たせ」
私が言うと、久しぶりに会った彼は「全然」と穏やかな笑みを見せた。
私は今から、マサトくんとごはんを食べに行く。
私がいつものように「残業続きでぐったりしてるから」とやんわり断ったら、「ごめん。どうしても話したいことがあるから、1時間だけ付き合って」と返ってきたのだ。
彼がそんな風に食い下がったのは初めてで、とても戸惑った。
いろいろと疲れているのは事実だし、誘いに応じるのは気を持たせるだけだと思って、断ろうとしたけれど……結局、話の内容が気になって、会うことに決めたのだった。
「お腹空いてるよね? とりあえず、どっか飯屋入ろう」
「うん、そうだね」
マサトくんと並んで歩き出す。
金曜日の夜なのに、私の隣にいるのは、どうして大和じゃないのだろう。
そう思ってしまった自分に腹が立った。
……もう嫌だ。
いっそマサトくんと付き合ってしまえば、大和を忘れられるのだろうか。
バカだ私、何考えてるの?