Toxic(※閲覧注意)
1時間だけ、というのは本当らしく、マサトくんは飲み屋ではなくオムライスが有名な洋食屋をチョイスした。

アルコールは一応メニューにあったけれど、彼が頼まないので私も頼まなかった。

どうしても話したいことなんて、会ってもらう為の口実なのかと少しだけ思っていたのに。

シラフで話したいほどの話があるということか。

「仕事大変だったみたいだね、ほんとにお疲れ様」

「ありがとう。まあ、毎年この時期はこうだから、慣れっこだけどね」

しかし、料理が運ばれてきて、それをあらかた食べ終える頃になっても、マサトくんは世間話程度の話しかしない。

そういえば髪型変えたんだねとか、最近観た映画の話とか。

ついに私の皿の上のオムライスも綺麗になくなり、話はどうするんだろうと思っていたら、

「出張で鹿児島に行ったから」

と、お土産に私の大好きな芋焼酎をくれた。

どうしても会いたい理由は、お土産を渡すため?

だとしたら、非常にありがたいけれど拍子抜けだ。

結局、特別な話もないままデザートまで食べ終わり、食後のコーヒーもあと二口くらいで飲みほしてしまいそうな時になって、

「響子ちゃん、話っていうのはね」

ようやく、マサトくんが口を開いた。
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