砂時計が止まる日
家に帰るとリビングでは母がコーヒーを飲んでいた。
「今日、遅かったわね。」
「友達がバイトしているカフェに行ってたんだ。」
僕の説明に母の目が大きく開く。
「バイトをされてるお友達がいるの?」
その目は僕はよく見る。
「あぁ、生徒会長をしている優秀な子だよ。」
母のその目から僕は新垣を守りたかった。
新垣は本当に優秀な人だ。
ほとんど何も欠けていない、完璧とも言える人。
けれど母はそれを評価しようとはしないだろう。
きっと、一昨日のパーティーでのことは伝えてはならない。
また、母が新垣のことをあんな目で見るから。
「ねえ、あなた。
蓮君の学校の生徒会長さんってバイトしてらっしゃるのね〜
びっくりしたわ〜」
リビングに父が入ってくると母は皮肉って言う。
「へぇ、あの新垣さん、だっけ?
話し方も態度もしっかりしてて、まさに才色兼備って感じだったな。
来賓の方からもパーティーでの記念品の中に手書きの一筆箋が入ってて今日も色んな所から連絡が入ったよ。
会長もバイトもきっと大変だろうけど、それを続けられるんだから凄いよね。
蓮のお嫁さんもそんな人がいいな、なんてな。」
父は冗談めかしてそう言う。